“愛・氣・創造”で、アパレル界に革命を起こした
名経営者 島 正博
平成の時代、日本は失われた30年として、経済的にも、ものづくりでも大きく評価を下げることになりましたが、そのような状況で、業界にイノベーションを起こして、世界的に認められた島精機製作所の経営者 島正博を題材とします。
島正博は、1937(昭和12)年、和歌山県和歌山市に生まれました。正博が8歳の時、父親を戦争で亡くしています。一家の大黒柱になることを意識し、野菜を売って家計を助けながら、10代の頃から発明に熱中し、16歳の時には、手袋編み機の特許を取得しています。その後も仕事をしながら、県立和歌山工業高校を卒業しています。
正博は、1962(昭和37)年、島精機製作所を設立し、当初は、全自動手袋編み機を開発・販売していましたが、1968(昭和43)年、全自動衿編み機を開発・販売し、1981(昭和56)年、横編み機のデジタルデザインをシステム化して、1991(平成3)年、ファッションの多様化に伴って増大する多品種・小ロット生産に影響を与える柄サンプルづくりの大幅な時間短縮を実現させています。
1995(平成7)年、世界初のミシンを使わず、どんなデザインのニット製品(セーター、カ-ディガン、ドレス等)もわずかな時間で、しかも全自動で編み上げることができる完全無縫製コンピュータ-横編み機(ホールガ-メント編み機)を開発しました。そして、ファッション業界で世界に名だたるルイ・ヴィトン、プラダ、グッチ、ベネトン、ZARA、H&M等が島精機製作所のホールガーメント編み機を使用しています。
島精機製作所のホールガーメント編み機は、高価ですが、人件費の高い先進国でも十分に採算がとれ、サンプルをつくる手間が省けること、多様化するファッションニーズに短納期、適正コストで応えられること、縫い代がないのでシルエットが美しく着心地がいいことなど沢山のメリットがあるため、上記のような有名ブランドなど世界中で導入がすすんでいます。
正博は次のように語っています。「仕事を愛していたら、情熱が湧くのです。もう少しよいものにしたい。デザインを改良したい。販売価格も安くして、世の中に広めたい‥‥という具合に、どんどん創造する氣力が湧いてきて、こんな発明をしたいという願望が強まると、生産するものが高度化してくるのです。『愛』と『氣』と『創造』 こそ人間特有のもので、コンピューターにもAIにも代替され得ないのです。やる気を出して発明に精魂を傾ければ、それが成功につながり、会社の活気となります。でも、やる気だけではなく、創造性も大切です。創造性は顧客を思いやる心から生まれることを知らなければなりません。」正博の発明哲学には、“愛・氣・創造”という三つのモットーをベースとした心意気があります。それは、AI化する中での現代人の悩みを解決するヒントにもなるのではないでしょうか。
正博は本社エントランスには、イタリアの代理店から贈られた赤とシルバーの高級者フェラーリを展示しています。社員に世界一流品を目に入れさせ、手に触れさせることによって、感性を磨かせて、本物を間近に見せることで、色彩感覚、デザイン力、造形美へのこだわりを養わせているのです。
またもう一方のエントランスには、ロダンの“考える人”とボッテーロの“ラージハンド”の彫刻を飾り、考えているだけではいけない、手を動かしなさい。というメッセージを発信し、社員のモチベーションを上げる工夫をしています。
正博は、発明家と経営者という二刀流として、自身が両者を分断することなく、両者がつながることを考え、目標に向かって果敢に実践しなければ生きている意味がないとしています。
経営者の皆様にも、発明、経営どちらかが得意の方がみえますが、視野を広げ、大局的に物事を見て、どちらかに偏らないようにすることが肝要のようです。
弊社プレジデントワンは、経営者を教育する『経営者教育』のカリキュラムを設けてします。ご興味のある方は、ご連絡下さい。
加藤 博司