名著 稲盛和夫『アメーバ経営』を読む
岸田文雄首相が、経済財政運営と改革の基本方針2022を公表し、未来を切り拓く資本主義、「成長も、分配も」を実現し、成長と分配の好循環を生み出す。という政策を打ち出していますが、言葉遊びと論じるマスコミもあります。コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻による資源高、材料費高、円安、人材不足と中小企業に対する環境は厳しいものがあり、今まで以上に経営者と社員が一体となっていかなければ会社経営ができなくなってきています。今回は、社員一人ひとりが会社経営に主体的にコミットする方法を著した稲盛和夫『アメーバ経営』を題材とします。
稲盛和夫は、1932(昭和7)年、鹿児島県鹿児島市に生まれ、1951(昭和26)年、鹿児島県立大学(現 鹿児島大学)の工学部に入学します。1955(昭和30)年に卒業しすぐに、碍子メーカーの松風工業に入社しますが、会社が業績不振となった為、1958(昭和33)年退社しています。1959(昭和34)年に松風工業の社員8人で京都セラミック(現 京セラ)を設立し、1969(昭和44)年、稲盛は社長に就任しています。その後1984(昭和59)年、京セラの資金を投入して第二電電(KDDI)を設立し、2010(平成22)年には、 赤字続きの日本航空(JAL)の会長に就任し、3年程で上場会社に復活させています。
稲盛は、会社を小さなユニットオペレーションの集合体にすれば、経営者はそれぞれのユニットから上がってくる採算状況を見ながら、どこが儲かっているか、損をしているのかという会社の実態をより正確に把握できると考え、会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分け、社内からリーダーを選び、その経営を任せるリーダー、つまり共同経営者を育成する「アメーバ経営」を実践しました。
稲盛は、「アメーバ経営」の目的として、次のことをあげています。
1.市場に直結した部門別採算制度の確立
2.経営者意識を持つ人材の育成
3.全員参加経営の実現
そして「アメーバ経営」をするにおいて重要な小集団(組織)の分け方の3つの条件をあげています。
- ① 切り分けるアメーバが独立採算組織として成り立つために、明確な収入が存在し、その収入を得るために要した費用が算出することができる。
- ② 最小単位の組織であるアメーバが、ビジネスとして完結する単位となること。
- ③ 会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること。
こちらの「アメーバ経営」の目的・運営方法は、『アメーバ経営』で著しています。
稲盛は、『アメーバ経営』で、①活動の目標や成果のすべてを数量ではなく、金額で表示する。②時間意識を高め、常に緊張感ある職場をつくりだす。③スピードが何より重視されており時間効率をいかに高めていくかが競争に勝つための鍵となってくる。④あらゆる業務において、ダブルチェックを行い、業務そのものに信頼性を高め、会社の健全性を維持する。⑤売れないモノは早く処理し、長期滞留在庫を厳しく管理する。として、会社経営に必要な事項を上げ、“売上を最大に、経費を最小にする”をスローガンに、“売上を増やす”、“経費を減らす”、“時間を短縮する”を徹底させて、採算を向上させ、手許キャッシュを増やして、財務体質を強化するのが会社経営である。としています。
稲盛は、『アメーバ経営』で、“いままでのやり方でいいのか”ということを常に考え、よりよい方法を求め、昨日より今日、今日より明日と、与えられた仕事に対し、改善、改良を続けていることが事業を永続的に運営することにおいて肝要である。 としています。
稲盛は、企業を動かすリーダーに、“「人間として何が正しいか」という哲学、論理がなければならないと考え、正しい哲学、論理が欠如していれば、外部のいかなる規制や制度があろうとも機能しない。”とし、“リーダーは、自ら正しい判断基準を身につけながら、その判断基準をメンバーとの間で共有するべきである。会議や現場などのあらゆる場面において、正しい判断の仕方や問題の解決方法を、リーダーが指導・教育し、それを繰り返すことにより、メンバーとの間でフィロソフィ(経営哲学)を共有化し、経営者としての意識を高めていくことが最も大切である。”と締めくくっています。
稲盛和夫は、若手経営者を育成する盛和塾を立ち上げ、『アメーバ経営』以外にも、『稲盛和夫の実学』、『京セラフィロソフィ』、『生き方』など経営者にとって有用な著書を出していますので、経営者の方々には、是非、読んでいただき、今後の経営に活かしていただきたいと思います。
弊社プレジデントワンは、経営者を教育する『経営者教育』のカリキュラムを設けています。ご興味のある方は、ご連絡下さい。
加藤 博司