阿川佐和子の『聞く力』を読む

 アラブ諸国とイスラエルによる中東戦争・中国による台湾侵攻・ロシアによるウクライナ侵攻・尖閣問題などいつの時代も紛争や戦争が絶え間なく行われています。そして、事の起こりは、コミュニケーション不足に端を発することはよくあることです。“人とのコミュニケーションは、上手く話すことより、聞くこと”と言われていますが、ビジネスにおいてもコミュニケーション能力が肝要になっているようです。今回は、コミュニケーションで重要視されている聞く力のヒントとなる阿川佐和子著書の『聞く力』を題材とします。

 

 阿川佐和子は、1953(昭和28)年、作家 阿川弘之の長女として東京に生まれました。東洋英和女学院中等部・高等部を経て、慶応義塾大学文学部西洋史学科を卒業しています。卒業後は、織物職人を目指しながら、様々なアルバイトを経験しましたが、1981(昭和56)年、「朝のホットライン」のレポーター・1983(昭和58)年、「情報デスクToday」のアシスタントを務めます。1989(平成1)年に「筑紫哲也NEWS23」のサブキャスターを務め、1998(平成10)年には「ビートたけしのTVタックル」の進行役として活躍します。2011(平成23)年に、対談番組「サワコの朝」のMCを務め、2012(平成24)年、著書 『聞く力』で、2012年の年間ベストセラーを獲得しています。

 

 阿川は、相手が話しやすい聞き方について、次のことを挙げています。

 
  1. ① 会話の間に相槌を打ちながら聞く
    日本人は相手の反応をいちいち細かく確認しながら、会話をしたいことが多いからです。
  2. ② オウム返し質問しながら聞く
     例として、語り手… “僕ね、実は怖がりなんですよ。”  聞き手… “怖がり?”  語り手… “そうなんですよ。僕、小さい頃からお化け屋敷とか異常に怖がって、雷もいまだに大嫌いです。”というような具合。
  3. ③ なぐさめの言葉は、二秒後にする
     例として、語り手… “私、すごく太ったでしょう。”  聞き手…二秒後位に、“いいえ、ちっとも” というような具合。
  4. ④ 人と会話をするときは、相手の目を見る
     相手の話を聞くときは、出来るだけ視線をそらさないようにする。→視線をあちらこちらに動かすような落ち着きのない目  つきはしないようにする。
  5. ⑤ 目の高さを合わせる
     人に「お話を伺う」、「苦言を呈される」という場面では、少なくとも相手より低い位置に自分を置くことが肝要。
  6. ⑥ 安易に「わかります」を言わない
     例として、語り手…“結婚して一年足らずで主人が戦地で亡くなりました。その訃報が届いた日のショックは、今、思い出し  ても胸がキリキリするほどです。” 結婚をしていない聞き手…“ああ、わかります。わかります。さぞ辛かったことでしょうね。” 「わかるわかる」は、親切心から発せられる言葉ですが、安易に使うと、ときに傲慢と受け止められる恐れがあるので、注意が必要です。
  7. ⑦ 相手のテンポを大事にする
     人にはそれぞれに話すテンポがあるので、テンポがゆっくりの人の場合は、そのペースを崩すより、静かに控えて、新しい言葉が出てくるのを待つ。その結果、思いもかけない貴重な言葉を得ることもある。
  8. ⑧ 喋りすぎは禁物
     聞き手が話しすぎて、語り手の話を聞き出せないことがある。

 経営者の方々は、社員や取引先・金融機関・役所等とコミュニケーションを取らなければならないケースが以前より増しているように感じます。阿川佐和子の『聞く力』を参考にコミュニケーションをとってみるのもよいのではないでしょうか。

 

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加藤 博司