名著 『ブルー・オーシャン戦略』を読む
NHKで放送されている『クローズアップ現代』で、“ゼロゼロ融資”の問題が取り上げられていました。“ゼロゼロ融資”とは、企業がコロナ禍時に、日本政策金融公庫、民間金融機関から金利負担がゼロ(無利子)、担保もゼロ(無担保)で借りることができる融資です。ゼロゼロ融資は、2020(令和2)年3月から始まりましたので、来春くらいから返済が本格化するのですが、今度は借りたお金を返せる見通しのたたない企業が相次ぎ、国にかつてない危機感が広がっているようです。国は、企業の構造転換を促すことを目的とする事業再構築補助金の制度を創設し、企業の収益力を上げる施策を打ち出しています。
今回は、企業の構造転換の参考にすることができる名著『ブルー・オーシャン戦略』を題材とします。
技術進歩のスピードが速まり、生産性を目覚ましく向上させたため、企業はかつてないほど多彩な製品やサービスを生み出せるようになりました。その結果、“需要”を“供給”が上回る事態が様々な業界に広がり、グローバリゼーションによってこの傾向に拍車をかけています。供給は右肩上がりで伸びていますが、先進国市場の多くで人口が減少し、製品やサービスのコモディティ化、価格競争、利益率の低下が加速されています。このような状況を解決する目的で、 『ブルー・オーシャン戦略』は、INSEAD(欧州経営大学院)のW・チャン・キム教授とレネ・モボルニュとの共著で発刊され、日本では2005(平成17)年に発売されています。
『ブルー・オーシャン戦略』は、①競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にする。②需要を押し上げて、競争から抜け出すことを狙いとする。③ライバル企業を打ち負かそうとするのではなく、買い手や自社にとっての価値を高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって競争を無意味にする。とし、競合との正面対決で“レッド・オーシャン”でへとへとになっている企業に消耗戦になることを戒めています。
『ブルー・オーシャン戦略』のアクションとしては、
- ① 取り除く‥業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か。
- ② 減らす‥業界標準として思いきり減らすべき要素は何か。
- ③ 増やす‥業界標準として大胆に増やすべき要素は何か。
- ④ 付け加える‥業界でこれまで提供されていない今後付け加えるべき要素は何か。
『ブルー・オーシャン戦略』の成功例としては、日本の理容業界のQBハウスがあります。 QBハウスは、日本では男性のヘアカットが平均で1時間前後かかっていた時間を10分で仕上げ、3,000円~5,000円かかっていたヘアカット代を1,000円にするというビジネスモデルで、2003(平成15)年には、200店舗以上を擁するまでになっています。具体的には、ホットタオルを何枚も使った、肩もみ、髭剃りなどのサービスをやめ、ホースを用いてカット後の毛クズを吸い取る(エアーウォッシャー)というシステムを導入することで、シャンプー、ドライヤーという時間のかかる作業を省き、顧客の待ち時間を短縮させて、各店舗時間当たりの売上高を50%近くも増加させています。また、椅子ごとに滅菌器を備え付け、顧客ごとに新しいクシ、ネックペーパーを用いて衛生面にも気を配っています。
ブルー・オーシャンを創造するためには、コストを下げながら同時に買い手にとっての価値を高めていく必要があり、また、ブルー・オーシャンを創造した企業は例外なく、その業界でのパイオニアであるが、必ずしも技術を開発したのではありません。それよりも顧客に提供する価値を格段に引き上げることが肝要としています。
原料高騰、人件費引き上げなど悪化する企業環境で経営者の方々においては、頭が痛くなる今日ですが、『ブルー・オーシャン戦略』を読んでいただき、今後のビジネス戦略、事業再構築補助金の申請時に役立ていただければと思います。
弊社プレジデントワンは、経営者を教育する『経営者教育』のカリキュラムを設けてしいます。ご興味のある方は、ご連絡下さい。
加藤 博司