キーワードは”人”

 早いもので、今年最後のプレジデントワンニュースとなります。皆様、今年一年はどのような年だったでしょうか? 大型連休とともに増大するコロナ感染症が年明けから始まり、その翌月にはまさかのロシアによるウクライナ侵攻。その影響で、食糧問題、資源価格の高騰、米中関係など、気が収まることがない一年だったように思います。しかも、それらは解決の糸口さえ見つけ出せずに、年を越そうとしています。そのような暗い雰囲気の中、ワールドカップサッカーでは、森保ジャパンが予想を上回る大活躍を見せ、日本列島を熱く沸かせてくれました。ベスト8という目標には辿りつけなかったものの、結果以上に大きな感動と勇気を与えてくれました。来年3月にはワールドベースボールが開催され、日本チームにも多くのメジャーリーガーが参加を表明しております。スポーツ界では国を背負って命を懸けて戦う若者の姿が印象的です。選手が積極的に海外へ出ていくことで世界に通用する力と精神力を身に付けてきました。森保ジャパンでは26人中19人が海外で活躍する選手であり、スタメンはほぼ海外組です。

 一方、経済界はいかがでしょうか? 大学生の海外留学者の人数自体はコロナ禍まで増加傾向にありました。しかし、中身を見ますと、ほぼ一カ月以内の留学がほとんどで、留学なのか旅行なのかわからないような状況です。1年以上の留学生の数は全体で2%程度しかありません。また、面白いことに61%が女性です。ジェンダー社会なので、女性が積極的に海外へ出ていくことが問題ではありません。しかし、現実、政治家の90%、企業経営者の84%が男性というように、まだまだ日本は男性社会なのです。そのような構造において男子学生が海外への興味が低いということに矛盾を感じます。もっと女性が活躍できる社会に移行することが、この国の成長に繋がるのかもしれません。

 2023年のキーワードは“人”であり、まずは、上場企業から「人的資本経営」の義務化が始まります。「人的資本経営」とは、教育などの投資によって人材の能力や知識を高め、価値を最大限に引き出すことで、企業の価値向上をめざす経営のあり方です。そのために、各省庁は補助金や助成金を創設し、人に対する投資を行い、リスキリングを促し、人材を教育させることで企業の発展、国の成長に繋げていこうとしています。

 年末年始の大型連休、または1年の計を考えるこの時期に、自らのリスキリングを是非、検討しましょう。そして、来年こそはもっと明るい時代となりますよう、トップアスリートのように、個々の力を磨いていきましょう。

取締役 牧野 春彦