リスキリング:Reskilling, Re-skilling

 先日、2022年「新語・流行語大賞」にノミネートされた30語が発表され、その中に「リスキリング」がありました。同じ頃、経済産業省が2022年度補正予算案に「リスキリング」を支援するために753億円を計上する方針であることがわかりました。さらには、先月の岸田首相の所信表明演説内で、「リスキリング」に「5年間で1兆円」を投じる方針が表明されました。

 いま非常に注目を集める「リスキリング」とは、経済産業省の審議会で発表された資料では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。簡単に言えば「人材の再教育の取り組み」です。

 近年、DXの本格化やコロナによる働き方の変化によって、非IT企業においても仕事をする上ではITリテラシーが必須となっています。事業のデジタル化が進む現代においては、10年後には存在しない仕事のスキルしか持っていない人も多いのではないでしょうか。「リスキリング」は企業と従業員個人の双方が「生き残る」ために欠かせない人材戦略のひとつとなるでしょう。

    リスキリングへの誤解
  1. 誤解1:リスキリングは、一部のデジタル人材の育成・獲得の問題だ
    DXは、企業の価値創造の全プロセスを変化させ得る取り組み。
    デジタル戦略を考え、ロードマップを描く「一部の人材」ではなく、フロントラインの人々を含む全人材に対して必要と考えるべき
  2. 誤解2:リスキリングは、日本企業の得意なOJTの延長でできる
    OJTは「連続系」のなかでの能力開発。社内に「いまある」部署の「いまある」仕事をしてもらいながら、やり方を覚え、スキルを獲得してもらうもの。
    リスキリングは「非連続系」の能力開発。社内に「いまない」仕事、「いま、できる人がいない」仕事のためのスキルを獲得するためには、OJT以上の取り組みが必要
  3. 誤解3:リスキリングのコンテンツは、社内開発するしかない
    そもそもがデジタルに強い企業でないならば、すべてを内製化しようと思う必要はない。
    特に「デジタル」のスキルは、社内外を問わず共通のことが多い。外部にあるコンテンツや、プラットフォーマーの活用のほうが費用と時間の節約になる可能性は高い。
  4. 誤解4:DXの時代でも、デジタルスキルよりもリーダーシップコンピテンシー、 論理的思考力などソフトスキルの方が重要だ
    もちろん、ソフトスキルはDXの時代かどうかにかかわらず重要。
    だが、「ソフトスキルの方が重要」と言っているのは「デジタルを理解しない」「デジタルの詳細はわかっていない」ことからの「逃げ」の可能性がないか考えるべき。
    ソフトスキルだけが高くても、デジタル技術を実際に扱えなければ、生み出せる価値は限定的?
引用:第2回デジタル時代の人材政策に関する検討会「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」

落合 真人