名著 ドラッカー『マネジメント』を読む
オミクロン株による第6波の到来で、繰り返しコロナ禍による影響を受けて普通の社会生活が取り戻せず、経済環境が最悪の状況下で経営者の方々も現状や今後の見通しについて悩まれているかと思われます。こうした先行きが不透明で、“中途半端では生き残れない”時代に、“本物だけが生き残る”ために読むべき名著 ピーター・F・ドラッカーの『マネジメント』を題材とします。
ピーター・F・ドラッカーは、1909年、オーストリアのウィーンに生まれました。新聞記者、大学での講師を経て、GM(ゼネラルモータース)から会社組織の変革と再建を依頼されて、大成功を収めた後、『会社という概念』、『現代の経営』を出版してベストセラーとなりました。その後『経営者の条件』を出版し、1974年に、マネジメント論の決定版『マネジメント』が出版されています。その後も、『プロフェッショナルの条件』、『イノベータ-の条件』などの名著を残して、2005年、95歳で逝去しています。
〔『マネジメント』-事業は何か〕では、“自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。鉄鋼会社は鉄をつくり、鉄道会社は貨物と乗客を運び、保険会社は火災の危険を引き受け、銀行は金を貸す。しかし実際には、「われわれの事業は何か」との問いは、ほとんどの場合、答えることが難しい問題である。わかりきった答えが正しいことはほとんどない。「われわれの事業は何か」を問うことこそ、トップマネジメントの責任である。”とし、“企業の目的としての事業が十分に検討されていないことが、企業の挫折や失敗の最大の原因である。”と論じています。
“企業の目的と使命を定義するとき、出発点は1つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的である。したがって、「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる。
顧客にとっての関心は、彼らにとっての価値、欲求、現実である。この事実からしても、「われわれの事業は何か」との問いに答えるには、顧客からスタートしなければならない。すなわち顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。”とし、“「顧客は誰か」の問いこそが、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要である。”と論じています。
〔『マネジメント』-人は最大の資産である〕では、“人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは、費用であり、脅威である。しかし人は、これらのことゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結び付け、人の弱みを中和することである。”とし、“現状、多くの企業で行われているマネジメントは、潜在能力を開発するのではなく、問題、雑事、費用として扱っている。”と論じています。
〔『マネジメント』-仕事の生産性〕では、“仕事を生産的なものにするには、四つのものが必要である。”と述べています。
- ① 分析である。仕事に必要な作業と手順と条件を知らなければならない。
- ② 総合である。作業を集めプロセスとして編成しなければならない。
- ③ 管理である。仕事のプロセスのなかに、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。
- ④ 道具である。
これは、日本政府がさかんに取り上げている生産性向上の条件に沿っています。
〔『マネジメント』-組織の精神〕では、“成果中心の精神を高く維持するには、配置、昇格、昇進、降格、解雇など人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であることを認識する必要がある。それらの決定は、人間行動に対しての数字や報告よりもはるかに影響する。組織の中の人間に対して、マネジメントが本当に欲し、重視し、報いようとしているものが何であるかを知らせる”と論じています。
ここに挙げているものは、ほんの一例です。『マネジメント』は、企業とは何か・事業とは何かなどのマネジメントの使命、マネージャーとは何か・組織構造についての結論などのマネジメントの方法、トップマネジメントの役割・イノベーションなどのマネジメントの戦略と3つのPARTに分れており、経営者の基本と原則が網羅されています。
ユニクロの柳井正社長、星野リゾートの星野佳路社長等、多数の経営者がドラッカーの影響を受けており、迷った時には、ドラッカーの思考に立ち返り、ドラッカーの書籍を読んで、意思決定の判断をしているようです。
ドラッカーの『マネジメント』は、岩崎夏海の『もし高校野球の女子マネ-ジャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、『ドラッカーのマネジメントがマンガで3時間でマスターできる本』など、わかりやすく解説した書籍が多数、出版されています。
経営者の方々には、是非とも精読していただき、今後の経営の参考にしていただきたいと思います。
弊社プレジデントワンは、経営者を教育する『経営者教育』のカリキュラムを設けています。ご興味のある方は、ご連絡ください。
加藤 博司