アセアンにおける経済特別区(SEZ)の特徴:カンボジアの事例

 経済圏は、経済成長と競争力を促進するために注目されてきました。工業団地(IP)、経済特区(SEZ)、エコ工業団地(EIP)、テクノロジーパーク(TP)、イノベーション地区(ID)が含まれています(Peter Warr, et. al, 2015)。中でも、SEZは、ASEAN諸国の中でも、とりわけ発展途上国のカンボジア、ラオス、ミャンマーの経済発展にとって重要な役割を果たしてきました。

 SEZは、投資家、被投資国の双方にとってウィン・ウィンな関係です。被投資国にとっては、外国による直接投資は雇用問題を解決し、結果的にその国の経済発展に繋がります。投資家にとっては、SEZ で投資することにより、輸入税免除などの優遇措置や、SEZ内における直接経済活動の管理要件を処理する様々な政府部門の代表者が在籍する「ワンストップ」サービスを受けることができます(Bui Thi Minh Tam, 2019)。

 アセアンの場合、投資家保護の観点からの、SEZのさらなる魅力は、中国やタイなどの会社の本拠地での操業が何らかの理由で中断された場合に、生産量を迅速に増やすことができる予備生産基地を提供することがメリットだと言われています。例えば、2013年10月、タイの東部州で洪水が発生し、アマタナコーン工業団地の主要企業が一時的に閉鎖されました。混乱するとコストがかかり、多くの企業が生産期限を守ることができず、サプライチェーンの各部分に決定的に依存する最終製品の生産を危うくしました。 しかし、SEZは他の場所に予備工場を設置し、短期間で生産を増やすことができるため、この種の混乱で生じるコストを削減できます(Peter Warr, et. al, 2015)。

 カンボジアでは、2005年にSEZ制度が初めて導入されました。SEZ開発の目的は、投資環境を改善すること、生産性と競争力を高めること、輸出を促進すること、雇用を創出すること、貧困を削減することが挙げられます。SEZでの投資のメリットとして、輸入出の優遇措置、投資法に基づく利益の免税、国外及び国内からの投資誘致の窓口であるカンボジア開発評議会、税関、商業省および労働職業訓練省を含むSEZ管理によるワンストップサービス、簡素化された税関手続き、投資および関連する管轄の職員との相談、充実したインフラが挙げられます。

 カンボジアではSEZで投資する日系企業が増えています。JICAによれば、カンボジアへ進出するパターンとして、中国生産拠点の移転(チャイナプラス1)、メコン域内での水平分業の進化(タイプラス1、ベトナムプラス1)や初めての海外展開です。2019年に、オペレート中のSEZは、23カ所で、約490社が活動しています(Fresh News, 2019)。例えば、下の図にあるように、プノンペンにおいて、日系企業は、50社がSEZ内に集積しています。プノンペン以外にも、タイ国境やベトナム国境の経済特区に企業が集積しています。SEZ内では、縫製業、電子・輸送機械部品、プラスチック、食品、家具、自動車部品に至るまでの軽工業が含まれています。

【図:JICAカンボジア事務所(2020年5月)より】

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株式会社ANCジャパン
執行役員 カンボジア・ベトナム担当
リム・リーホン