STEMとカンボジアの学生による有人ドローン開発
近年、ビッグデータやAIの活用などといった第4次産業革命に突入し、人類の生活が急激に変化していると言われています。先進国の日本などでは、第4次産業革命を迎え、それによってもたらされた変化に対し、十分に準備はできていると思われます。しかし、発展途上国では第4次産業革命に追いつくことができるかどうかが今や、課題となっています。
カンボジアもその例外ではありません。カンボジア政府は、2030年までに国を高中所得国にし、2050年までに高所得国にすることを目標としています。とはいえ、第4次産業革命に突入する中で、それに対応する制度的・人的資源が十分であるかどうかが課題となっています。
こうした課題を踏まえ、カンボジアは、国家戦略開発計画(National Strategic Development Plan: NSDP)2014-2018を策定しました。
NSDPによると、農業振興、インフラ開発、民間部門開発と雇用、 及び人材育成と能力開発が重要な分野となっています。教育・人材育成関連においては、中等教育の就学率の向上、科学・技術・工学・数学(Science, Technology, Engineering, and Mathematics: STEM)系教育促進に向けたカリキュラムの改訂、大学の STEM 教育振興などが謳われています(JICA, 2016)。
とはいえ、現在は、以下の課題が指摘されています。第1に、カンボジアには、人口100万人あたり17人の科学技術研究者と13人の技術者しかいないことです。第2に、科学技術分野においては、初級・中級・高学歴の人材も十分ではありません。 たとえば、電気通信技術者、産業および生産技術者、化学技術者が不足しています。さらには電子工学技術者でさえ、その数が少ないので、労働市場で非常に需要が高い人材となっています。第3に、STEM分野への高い入学率を考慮すると、一般教育、特に科学と数学の質が依然として重要な懸念事項です(Kao & Shimizu, 2020)。
以上の事を踏まえると、既存の労働力と今後、就職する人々のスキル向上が不可欠です。 このメカニズムにより、低レベル熟練労働者の数が減少し、中高レベル熟練労働者の数が今後、増加していくだろうと言われています(Kao & Shimizu, 2020)。
STEM教育が進められている中、最近、その成果とも言える事例がありました。それは、カンボジア国立工科大学(NPIC)の学生によって開発された有人ドローンです。その開発目的は、プノンペンにおける交通渋滞の解決と、高層ビル火災の消火です。このドローンは、体重60 kgまでのパイロットを乗せることができ、1 kmの距離を約10分間飛行することができます。 この研究開発には3年かかり、製作には約20,000ドルの費用がかかりました。このドローンは現在4メートルの上昇が可能ですが、開発チームはより高い高度で飛べるようにするために開発を進めています(Reuters, 2021)。
今後もSTEMの教育が進み、様々な物が発明されることが期待されています。
(SOURCE https://www.reuters.com/world/buckle-up-cambodian-students-build-manned-drone-aid-community-2021-09-21/)執行役員 カンボジア・ベトナム担当
リム・リーホン