先代のカリスマ経営から共振経営にシフトし業績を上げた名経営者 高原豪久

 後継者不足で事業承継がうまくいかなかったり、後継者がいてもその後継者に経営能力がなく、廃業に追い込まれる会社が多々ある中、創業者で先代のカリスマ経営者と言われた高原慶一朗の長男で、見事に業績を向上させたユニ・チャームの代表取締役社長 高原豪久を今回の題材とします。
 高原豪久(以下「豪久」)は、1961年(昭和36年)、愛媛県川之江市に生まれ、山手学院高等学校を経て、成城大学経済学部を1986年(昭和61年)卒業して、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行しました。退職後、1991年(平成3年)に、父 高原慶一朗の後継者として、ユニ・チャームに入社し、1995年(平成7年)取締役、1997年(平成9年)常務取締役、2000年(平成12年)常務取締役経営戦略担当を経て、2001年(平成13年)、彼が39歳の時に代表取締役社長に就任しています。
 豪久が社長に就任した当時は、創業から40年間、一人でユニ・チャームを引っ張り続けてきた父 慶一朗を社員の多くが絶対視し、「慶一朗の言うとおりにやっていれば間違いない。」という雰囲気が会社に充満しており、豪久は頼りない存在と会社内外から思われていたようです。この時、会社は、行き過ぎた経営多角化、国内市場の競争激化により、壁に突き当たり、2年連続で、営業利益は減少していました。また、カリスマ経営者の下で働いていたため社員の指示待ち体質が蔓延していました。
 豪久は、自分一人で会社を牽引することは考えず、現場の知恵を経営に活かし、経営の視点を現場が学ぶ「共振経営」を目指しました。経営陣が自ら足を運び、現場の一次情報を収集することを求め、同時に現場の社員にも経営者の考えていることを理解するよう求めたのです。
 豪久は、「共振経営」をするため、社長自らが主体的に動くということで、社員との心の距離を縮めようと、毎日、毎週、毎月のタイミングで、以下の行動を起こしています。


毎日の取り組みは、その日が誕生日の社員に、ハッピー・バースデー・メールを送る(贈る)
毎朝、仕事にかかる際には、まず社員のことを考える。
毎週の取り組みは、毎週月曜日の朝に、社内メールにコラムをアップする。
重要だと思う戦略の進捗状況、全社的な課題について、なるべく具体的に、担当している社員の名前を挙げて記載し、興味を持たせる。
毎月の取り組みは、社員との飲み会の開催
この飲み会は、課長なら課長だけ、一般社員なら一般社員だけと参加者の階層を絞り、決して上司を参加させず、本音を話しやすい状況をつくり、社員4人程度、1つのテーブルを囲んで全員で議論できる人数で実施し、社員の本音を探り、社長の発信していることがどのように現場に伝わっているかを確認する。

 豪久は、共振経営を実施しながら、「顧客の要望にどれだけ応えられるか」、「企業としていくら収益を出せたか」の2つの目的を相反せずに、同時に満たすことを実行し、ユニ・チャームを80を超える国や地域に進出させ、売上高の60%を海外で稼ぎ、業績でも先代(創業者)の時代の3倍にしています。
 私のクライアントにも、先代(創業者)の後継者で、2代目の経営者がいます。先代(創業者)からすると、もの足りないという声を聞くことがあります。時代背景から社長自ら引っ張っていくワンマン経営が難しくなっています。経営者一人が牽引していくのではなく、豪久のような共振経営というのもあるのではないでしょうか。

 弊社プレジデントワンは、経営者を教育する『経営者教育』のカリキュラムを設けています。ご興味のある方は、ご連絡下さい。

加藤 博司