松下幸之助がリスペクト(尊敬)した名経営者 鳥井信治郎

今年9月まで日本経済新聞に連載されていた伊集院静の『琥珀の夢』が、単行本化され、好評を博しています。 今回は、その『琥珀の夢』の主人公の株式会社寿屋(現在のサントリー)の創業者 鳥井信治郎を題材とします。

鳥井信治郎は、1879年(明治12年)、両替商を営む父 忠兵衛、母 こまの二男として大阪の堂島に生まれました。信治郎は、幼少の頃から学業が優秀で、大阪商業学校に入学しましたが、入学後2年を経過した頃、父の考えにより、中退し、薬種問屋 小西儀助商店に丁稚奉公することになりました。信治郎は、奉公をテキパキとこなし、店主の小西儀助の 葡萄酒づくりを手伝うようになりました。この小西儀助との葡萄酒づくりでの遣り取りが、後の信治郎の生き様に大きな影響を与えています。小西儀助が葡萄酒づくりを諦めたことを機会に、信治郎は、小西儀助商店を退職し、他業種を勉強する為、染料商の小西勘之助に移って修行し、1899年(明治32年)、大阪府西区に鳥井商店を創業しました。

信治郎は、葡萄酒づくりに乗り出しましたが、日本人の舌にあわず、中国人相手の商いを行って、生計を立てていました。その間も信治郎は、日本人の舌にあう葡萄酒を調合し続けて、1906年(明治39年)、「向獅子印甘味葡萄酒」を発売しましたが、売上が芳しくありませんでした。1907年(明治40年、日本人の舌にあう「赤玉ポートワイン」を発売しました。この発売にあたっては、はじめて新聞広告を出しています。「赤玉ポートワイン」は、その味と広告宣伝が功を奏し、大ヒットとなりました。1921年(大正10年)には、株式会社寿屋を設立しています。

「赤玉ポートワイン」は、株式会社寿屋を設立当時、国内ワイン市場の60%を占めていました。信治郎は、この成功に飽き足らず、日本の風土・気候では製造不可と思われてたウィスキー製造に着手します。ウィスキー製造にあたっては、長期熟成が必要となり、5年から10年、樽詰めして、倉庫に寝かせておかなければならない。この期間の収入は得られないので、ギャンブルのような事業でありました。

信治郎は、ウィスキー製造の専門家 竹鶴政孝(朝ドラ“マッサン”の主人公)をヘッドハンティングし、ウィスキー製造に適した大阪府山崎にウィスキ-蒸留所を建設して、本格的に製造開始しました。1929年(昭和4年)、日本初の国産ウィスキー「サントリーウィスキー白札」、「サントリーウィスキー赤札」を発売したが売れず、歯磨の製造販売権や買収したビール事業の販売権を手放しています。1937年(昭和12年)、山崎ウィスキ-蒸留所を建設してから14年目に、「サントリーウィスキー12年もの角瓶」がヒットし、ウィスキー事業が軌道に乗り、1940年(昭和15年)、後に大ヒットとなる「サントリーオールド」が誕生しています。

太平洋戦争で、株式会社寿屋の本社などが空襲を受けた中、山崎ウィスキ-蒸留所は戦火を逃れました。信治郎は、戦後まもなく、商魂を発揮し、まず、アメリカ軍に入り込み、「赤玉ポートワイン」、「サントリーウィスキー12年もの角瓶」などを拡売し、業績を押し上げていきました。信治郎は、新しい商品開発に暇なく、山崎ウィスキ-蒸留所のウィスキーの原酒を持ちこみ、毎夜、ブレンド仕事に打ち込んでいました。そうした中、1960年(昭和35年)「サントリーローヤル」が発売されています。「サントリーオールド」も1950年(昭和25年)に発売され大ヒットし、ウィスキーのサントリーを日本のみならず、世界に轟かせるようになりました。

鳥井信治郎は、1962年(昭和37年)、83歳で逝っています。
松下幸之助は、大阪府の船場で、五大自転車店に奉公していた頃、鳥井信治郎に舶来物の自転車を届けに行き、鳥井信治郎の考え方に共感したようです。戦後、松下幸之助が苦しい時に、鳥井信治郎が多額の資金援助をしています。 1981年(昭和56年)、大阪、築港サントリーの洋酒プラントの中に、鳥井信治郎の銅像が完成した時の除幕式で、松下幸之助は、当時87歳で、体調を崩していたにもかかわらず、除幕式に参加し、見事なスピーチを披露しています。

信治郎は、生涯マスターブレンドテイスターでありましたが、後継者となる佐治敬三には、その仕事のコツを一切伝授していなかったようです。その伝授しなかったことが、佐治敬三に創業者意識を持たせ、サントリー躍進の礎になっているのではないでしょうか。

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加藤 博司