易経に読み解くビジネス(8)韓国:文在寅大統領

 私が申し上げるまでもなく、日韓関係は今、最悪です。日韓だけにとどまらず、米韓関係も「韓国疲れ」と言われているように最悪です。そういう関係をつくりだした文在寅大統領とは、いったいどういう人物なのでしょうか。ここでは、政治的、思想的背景に踏み込まず、易経を通して文在寅大統領を見てみたいと思います。
 先日、ある経営者が、韓国を訪れました。その方は、毎年必ず訪れているそうです。今年、訪れて驚いたと言います。以前と比べ、韓国の若者の目が輝き、日本人と比べてはるかに向上心が旺盛で驚いた。このままでは、日本の若い人はとても韓国の同世代に太刀打ちできないだろうと言いました。若い人は優秀で、能力を発揮するためには、みんな母国を捨てて、海外に行こうとしていると言いました。私は、ちょっと待ってください、どんなに韓国の若者が優秀であっても、母国を捨てるのは、あまりに大きな問題ではないですか、と返しました。韓国はGDPの約6割を財閥が生みだしています。大企業に就職できなければ、人生を絶望するといういびつな国です。
 世界を見渡しますと、隣国同士は仲が悪いものです。日韓、日中だけではありません。トルコとギリシャ、タイとカンボジア、中国とヴェトナム、イギリスとフランス、ロシアとウクライナ、インドとパキスタンなど数え上げたらきりがありません。隣国というのは、お互いに手の内を知りすぎているので、我慢ならないことが多いのかもしれません。聖徳太子十七条憲法の第十条にこんな行があります。「心の中で恨みに思うな。目に角を立てて怒るな。他人が自分にさからったからとて激怒せぬようにせよ。人にはみなそれぞれ思うところがあり、その心は自分のことを正しいと考える執着がある。他人が正しいと考えることを自分はまちがっていると考え、自分が正しいと考えることを他人はまちがっていると考える」。
 それを承知しているとしても、韓国が主張する徴用工、慰安婦、レーダー照射問題、竹島問題は、国が存続する以上、消えてなくならないようにさえ見えます。たとえある時期、“解決した”としても、あれは間違いだったと、条約であっても、口約束として反故にしてしまう。国家の体をなしていないことに驚きます。一方、見方を変えれば、こんな思いもあります。1875年の江華島事件以来、日韓の関係はよくありません。ヨーロッパ植民地列強に呼応するように江華島事件を引き起こした日本です。150年近く経った今でも、その傷跡は癒えません。誘因となった当時の西欧諸国の犯した罪は深いと思います。
 さて文在寅大統領を易経で見ると、どうなるでしょうか。それは、「天水訟の4爻」となります。卦辞は、 「卦たること、乾上坎下(けんじょうかんか)二象(にしょう)を以て之を言えば、天陽は上行(じょうこう)し、水性は下に就く。其の行相違う。訟を成す所以なり。」
 「二体を以て之を言えば、上は剛、下は険。剛険相接す。能く訟うる无からんや。又た人、内険阻にして外剛強、訟うる所以なり。」です。
 長い卦辞ですが、解釈は次のようになります。猛々しい性質と陰険な性質を有しているため、争いが起こらずにはいられないという意味があります。また、この卦を一人の人間と見るならば、内心が陰険であって、外面は気が強い。とにかく訴訟を起こしがちな性格である、と易経は言います。弁護士でもある文在寅の顔を易経は鋭く洞察しています。また、もし文在寅大統領の内心に誠があれば吉である。あくまでも争って止まらないなら凶である、と言います。文在寅大統領は果たして、争うことを止めるでしょうか。
 爻辞を見てみましょう。爻辞は九四です。九四とは、「訟に克たず。復(かえ)りて命に即(つ)き、渝(かわ)りて安貞なれば、吉」です。九四は訴訟に勝てないと言います。自分の本心に立ち返り、正しい道理につき従い、態度を変えて、平安で正しい態度をとれば、結果は吉となります。日米の長年の関係を断ち切り、「積弊の清算」を是が非でもやり遂げようと頑張ればかえってマイナスになると言います。文在寅大統領は、今ある国際的な正しい道理を無視すれば、国益を損なうことになるようです。
 九四は、剛毅な性格で上半分の健やかなる天の中にいる。しかしながら中庸の地位も正義も得ていない。専門的になりますが、九四は上に五があり、下に三を踏み、しかも初六に相、応じています。上の五は、現代社会で君主に相当するアメリカと読めます。道義(今まで築き上げてきた米韓関係)としてこの人と争って勝てるわけがない、と言います。三は下にいるけれども陰であって柔らかい。初は陰と陽とで引き合う関係にあって、おとなしいと見ています。三は、対抗策のない日本と読めます。九四は強く猛々しく、訴訟を起こしたがるけれども、相手がいない、と判断します。つまり、文在寅大統領は、独り相撲をとっていることになります。
 これまで長い時間をかけて築き上げてきた日米韓という枠組みを、“猛々しく、壊したがる”。しかし、その相手であるアメリカと日本は、呆れて訴訟相手にもならないと見ています。易経で見る限り、文在寅大統領は、日米にとって、なんとも度し難い人物のようです。来月、私は86歳になられる韓国の知識人にお会いする機会を得ました。そのような人物を大統領に担ぐ韓国人の深層心理をぜひ聞きたいと楽しみにしています。



代表取締役 松久久也