暗い時代への針が止まらない
みなさんと同様に、ちょっと言葉がありません。平和に暮らしていたウクライナの人々の前に、突然、戦車が現れる。平和を望み、核を放棄したウクライナに核の威嚇をほのめかす。以前、ロシアに行ったときに、現地で同行したロシアの若者が婚約者のウクライナの女性と仲睦まじく話していた光景を思い出します。人間とは恐ろしいものです。主権国家であるウクライナに、非軍事化、中立化という自分の主張を迫るプーチンの思考は破綻しています。たとえ非軍事化、中立化を勝ち取ったとしても、失うものは甚大です。ロシア国民の幸福につながる点は微塵もありません。プーチンの政治的大義と国民の幸せとは何の関係もありません。国際的孤立、経済活動の破綻、食料の不足等々。今回の行動によってプーチンの悪業は何十年と世界の歴史に刻まれることでしょう。
習近平、金正恩という2悪人もケーススタディとして学習しているに違いありません。プーチンは1989年のベルリン崩壊後の屈辱をはねのける行動に出たと報道されていますが、習近平も1860年のアヘン戦争の屈辱を晴らそうと虎視眈々と狙っており、両者の動きは瓜二つといえます。プーチン、習近平、金正恩という3悪人を抱えてしまった今日、世界は多大なリスクに直面する時代に入ったのは明らかです。東アジアも日に日に、まずい状況に接近しているのは間違いありません。大昔と異なりグローバル化が進展した今日、世界の相互依存関係はあまりに深くなっています。そうした現実を捨象し、時代錯誤ともいうべき暴挙に走る指導者の罪はあまりに大きいのではないでしょうか。本当に人間は野蛮だと思います。動物は集団で戦争をしません。人間は獰猛だと思います。
孫子の作戦篇は以下のようにいいます。「およそ戦いというものは、戦車千台、輸送車千台、兵卒十万もの大軍を動員して、千里の遠方に弾薬食料をおくらなければならない。長期戦になれば、軍は疲弊し、士気は衰え、戦力は底をつき、財政危機に見舞われる。そうなれば、その隙に乗じて、他の諸国が攻め込んでくるだろう。こうなっては、どんな知恵者がいても事態を収拾することはできない。短期決戦に出て成功した例はあっても、戦いを長引かせて成功した例は知らない。長期戦は、国家になんの利益ももたらさない。それがいかに有害であるかを認識しなければ、戦争によって利益を得ることはできない」。
孫子の兵法でいえば、プーチンはすでに敗北していることになります。自分の面子だけの戦いに変じていることでしょう。善良なウクライナの犠牲になられた人々に哀悼の意を表します。一日も早い終結を願い、今月はこのくらいにしておきたいと思います。
代表取締役 松久 久也