原始脳が東アジアを不幸にする日
長らく平和ボケと言われた日本の戦後の時代が懐かしく思われます。連日、不快なニュースが耳に入ってきます。これほど科学文明が高度に発達したにもかかわらず、野蛮なニュースで溢れています。私たちの理性は大脳新皮質がつくり、私たちの野蛮な行為は、原始脳といわれる部位がつくりだしています。私たちの穏やかで平和な暮らしは理性でしか成り立ちません。しかし人間の進化の過程で野蛮な原始脳が残ってしまったといわれ、非常に高度な知性と野蛮な本能が同居する誠に、奇怪な人間です。
「直接的には約7万人、間接的な殺人幇助も含めると30万人の犠牲者が出ている。そのなかにはロシアの民間人も含まれる」(出典 プレジデント2022年5月27日「ロシア国民の無差別殺人も平然とやる」)。
ソ連邦への歴史的ノスタルジアの名のもとに、平和に暮らしてきた人々を何のためらいもなく殺戮するプーチンは、もはや悪魔といっても過言ではありません。プーチンは尊い命と引き換えに、妄想の成果を得ようとしています。つくづく独裁者は恐ろしく野蛮だと認識させられます。この蛮行の動機が理性から出たと装い、実は爬虫類脳といわれる原始脳に由来しているからです。ロシア帝国の版図は1866年に陸地の占有率15.31%を占め最大になったといわれます。人々の幸福度や豊かさが問われる時代になった現代、プーチンにとっては国土の大きさが国の偉大さであり、誇りです。プーチンは時代から取り残された遺物のような人物であることは間違いないようです。プーチンの権力と息が続く限り、私たちはこの悩ましい問題から解放されることはないようです。
しかし、この日本から遠く離れた地での出来事は、他人事ではありません。なぜならばプーチンと同じ歴史的ノスタルジアを持つ習近平が隣国にいるからです。プーチンのノスタルジアよりはるかに強烈な妄想を抱いており、人類は今世紀最大の危機を迎える前夜ではないかと思います。ノスタルジアという習近平の野望と引き換えに手にするものは、実に厄介な幻想です。中国の人々とは長い間、つきあってきました。人間的に優れた人をたくさんみてきました。しかし、今日、自国の利益だけを追求し、習近平の政策を支持する中華思想の人が増え、すっかり中国人のイメージが変わってしまいました。この人たちとは大事なところで信頼し合うことは不可能ではないでしょうか。目先のビジネスの利益のためにこの中国の変節から目を逸らそうとしている日本の経済人が多いようです。私個人の中国に対する精神的な距離は、すでに1970年代に戻ったといえます。残念なことですが、もう二度と中国に足を運ぶことはないでしょう。世上、うわさされている中国進出企業が中国に接収されることも十分あるのではないかと思います。中国はすでに日系企業、外資系企業から、技術、ノウハウは吸収しつくしたのです。
版図が小さくなった現在の中国に対し、国恥地図というものがあります。習近平の頭の中にある中国の国境線です。
(出典「中華の復興」波立つアジア 失われた土地「国恥地図」 朝日新聞 2022年5月4日)
驚くことに朝鮮半島はもとより、沖縄も「中国」になっています。本当に沖縄は時代に翻弄される地政学的に難しいところに立地しています。中国と対立するベトナムもうかうかしておられません。中国政府はいちばん都合のよい解釈で都合の良い時代を切り取り、これがわが領土だと叫びます。従順に従ってきた朝鮮半島の人たちも保守系政権になり、これから難しい局面にはいります。飛鳥時代より対等を主張してきた日本という存在は、中国にとって誠に不愉快な存在であるに違いありません。
もし皆さんが中国と取引をしているとしたら、現実を直視し、あらゆるシミュレーションを行う時期に入ってきたのではないかと思います。わが国は平和を愛するから他国はわが国を侵略することなどあり得ないという信念が、ウクライナで見事に崩れた年にあたり、私たちの幻想も見直さなければならないからです。
代表取締役 松久 久也