今年の金融資産運用
コロナに翻弄されて3年目に入りました。ワクチンも出来上がり、薬も出来上がり、一昨年とはずいぶん状況が変わってきました。ところが、あたかもまだ手段がないかのように、PCR検査ばかり行い、感染者数の報道ばかりです。無症状、軽症者が大半であるにもかかわらず、これまでの対応に終始しています。毎年、インフルエンザの死者数は年間2500人から3500人で推移していたようです。しかしコロナで揺れるこの2年間のインフルエンザによる死者数の報道はほとんどありません。インフルエンザの死者数はそのままでコロナの死者数が増加する事態であれば辛い状況ですが、分析報道をほとんど聞きません。センセーショナルな報道にバイアスがかかっていないでしょうか。私の周辺でも家族がオミクロンに罹ったという例も出ていますが、冬にかかる普通の風邪のように治っています。報道と政府の対策は事実から乖離しちぐはぐになっているかもしれません。東京では非正規の人たちがコロナで働き口がなく、所持金数百円で野宿している人がたくさんおられます。そろそろバランスをとらないと犠牲者が増え続けます。
さて、今回は資産運用について触れてみたいと思います。日本は産業で稼ぐ力を失って久しくなります。利息はないに等しく、定期預金の利息は0.2%前後で、元金を倍にするのに360年もかかります。ひと頃は8%前後の安全な金融商品もありました。9年で元本が倍になりました。老後の資金として運用利息は年金とともに大きな財源でした。しかし今日では、利息は望めず、年金財源も乏しく、年金だけで老後の生活をやりくりすることはとても難しい時代となりました。とんでもない時代になったものです。
人間が生きていくためには、汗水たらして自分が一生懸命働くか、貯めたお金に働いてもらうかの二つの方法があります。これと同じように、国も一生懸命働いて貿易でお金を稼ぐか、国民が貯めたお金を海外で運用して利益を上げるかの二つの方法があります。前者の指標が貿易収支で、後者が所得収支といいます。日本は平成17年を境に、一生懸命働いて稼ぐ力がなくなり、これまで貯めたお金を世界に投資を行い、利益を上げていかなければならない時代になりました。ということは、生きていくためには仕事を覚えると同じように、お金を運用する知識も勉強しなければならなくなったということです。子供のころからお金のことに関心を持たせるのは功罪があり、難しいテーマですが、日本人にとって運用の知識はどうしても身に付けなければなりません。お金の運用は安易に取り組みますと、ギャンブルと間違う人がでてきます。しかし運用というのは、正しい知識があれば、大きなミスをすることはありません。日本人は昔からお金のことは卑しいものとして避ける傾向がありますが、日本が衰退一途の未来を考えますと、どうしても資産運用の知識は身に付けておきたいものです。私も金融については50年ほど観察し、ファンドマネージャーとも議論してきましたが、コロナで学習しましたのは、世界経済が世界恐慌並みの経済指標を示していたにも関わらず、1929年の世界大恐慌のような株価暴落につながらなかったことです。諸説あるでしょうが、実物経済90兆ドルに対して個人の金融資産残高が250兆ドルといわれ、世界にはすでに暴落するにはお金が膨大にあり、株式市場から離れてもすぐに資金が戻り、昔のセオリー通りにはいかなくなっています。また人間にかわり人工知能が運用を行っていますから、人間よりはるかに冷静に「暴落」を評価し瞬時に回復させているのだろうと私は思っています。
今年の運用についてお話しておきましょう。今年の運用に関わるキーワードは、金利、ウクライナ、コロナ、中間選挙です。資産運用というのはほとんどが国際要因で決まります。なかでも米国市場に影響を受けます。日本の株式市場は自律性があまりなく、米国市場の影響を大きく受けます。今年はコロナの影響が続き米国では物不足となり物価上昇が激しくなりました。この結果、物価を沈静化させるために金利を引き上げざるを得なくなりました。今年の運用はこの金利の影響をしっかり理解したスタンスで行わなければなりません。つまり、金利が上がれば、株式市場は下落します。米国市場が下落すれば日本の株式市場も停滞します。金利が上がれば株式は下がり、債券価格も下がります。したがって、今年の積極投資はリスクがあります。ウクライナも目が離せません。米中対立もあります。そして、覚えておきたいのは米国中間選挙がある年は、経験的に米国株式市場は上昇しないことがほとんどです。このように今年は資産を運用するにはネガティブな材料が多く、うまくいかない年と心得ておくことです。では、まったく投資活動をやめた方がよいかといえばそうでもありません。なぜならば、運用とは安値で購入して高値で売却してはじめて収益が出るため、いかに安値のゾーンを探るかが大事であるからです。今年はその安値の年に当たります。しかし、大幅に安くなって買い時であるからといって、全額を投資してはいけないのが投資活動です。安いと思って購入しても、もっと下がってしまったということが起こるからです。こうした間違いを防ぐためにはどうすればよいでしょうか。それがドルコスト平均法です。時間を分けて複数回にわたって購入するのです。
では購入をどのくらいに分ければよいでしょうか。ポイントは中間選挙がある11月8日です。この11月を境に、11月以降は相場の流れが強気に転じる可能性が高いのです。したがって、この2月から10月までの9か月間に複数回に分けて投資をするのがよいと思います。3分割くらいでしょうか。この9か月間にネガティブなことが起こります。3月には米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利引き上げの動きが出ますから、この前後で相場が下がります。また、ウクライナ問題や米中対立の動きが時々米国市場への悪影響という形で下落をします。一方、今後指数関数的に発展していくIT化を考えますと、GAFAは今後も上昇を続けていく確率が高いと思います。今年は安値で購入できる機会かもしれません。中長期で見たとき、資産運用にとっては良いタイミングではないかと思います。
あまり欲を出さず、期待収益率3%程度の安定型、安定成長型をベースに、GAFAかGAFAを組み入れた投資信託にもご関心を持たれるのがよいのではと思います。秋の中間選挙以降は、積極的なポートフォリオにシフトされてもよいのではないでしょうか。もちろん、本コメントはあくまで一つの目安にしていただき、投資活動は自己責任の原則で行っていただきたいと存じます。
代表取締役 松久 久也