デジタル庁
「複数の省庁に分かれている関連政策をとりまとめ、強力に進める体制として、デジタル庁を新設する」
菅首相は2020年9月16日の記者会見で、行政のDXを推進するための新しい行政機関として「デジタル庁」設置を明言しました。
新型コロナウイルスの対応で露呈した、行政機関のデジタル化の遅れや不十分なシステム連携にともなう非効率さなど、デジタル化について様々な課題が明らかとなっています。とくに、日本の行政はすべてが縦割り組織となっているため、IT関連業務についても各省庁がそれぞれ独自におこない、二重行政、三重行政になり、非常に非効率です。今回のデジタル庁の新設は、その縦割りになっているIT行政を一本化することを目指していると考えられます。
ITは単に省内の業務を効率化するためだけに利用されるものではなく、今回、問題になった給付金や、年金、雇用保険、納税など、国民に対してサービスを提供するための事業インフラという側面も強く、それぞれの行政サービスと一体です。そのため、予算についてもIT関連費用ではなく、各事業の費用として支出されることも多いようです。菅首相は、各省に分散しているIT行政の権限と予算をデジタル庁に集約する考えを示していますが、予算を失う可能性のある省庁からは猛烈な抵抗も予想されます。
デジタル庁が果たす役割が「デジタル後進国」と呼ばれる日本の未来を大きく変える可能性は感じていますが、デジタルをわからない人たちが予算と権限を持ち、権益を守るため利用者(国民)の便益を無視して立ち回り、大手ベンダーが非効率で高コストのシステムを導入させて、無駄な税金を使うだけの形骸化した存在になる可能性を否定できません。菅内閣が強力なリーダーシップを発揮し、関わる人すべてが、技術的な課題や問題解決の手法、コンセプトに関して共通認識を得られるよう徹底することが必要です。
「デジタル技術を意識しなくて済む『人間に優しい社会』を実現していきたい」
「サービスにおいて常に完全であることよりも、不完全ながら素早く提供して使ってもらいながら、より良いものにしていく『アジャイルガバメント』の手法を取り入れて柔軟に動いていきたいと考えている」
「基本的に『小さく生んで大きく育てる』ようにしたい。活動の進め方や組織の在り方についても、新しいカルチャーを積極的に取り入れていきたい」
平井デジタル改革担当大臣がデジタル庁の創設について語った言葉です。国が社会全体のデジタル化推進に向けて本格的に動き出した今、民間企業にとってもその動きは参考になるはずです。
わたしたちは、社会の構造変化を見据えながら、いま何をすべきかを企業のみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。
落合 真人