人の評価は難しい

 2022年5月、Googleが新しい人事評価プロセスを発表しました。従来は成果主義と呼ばれる、個人の成果にランク付けし評価していましたが、新しい評価制度ではランク付けを行わず、目標に対するプロセスや進捗状況、行動内容などを評価します。Googleが人事評価制度を刷新した背景には、従業員の報酬や待遇に対する不満があったとされます。

 2010年以降のアメリカでは、IT化やグローバル化が進むなか従業員に求められる能力や働き方が多種多様化し、成果主義に基づく評価制度では、正しく評価することができなくなってきていました。そのため、Google、General Electrics、Microsoft、Adobe Systems、IBM、GAPなどの大手企業は、数値やランクによる採点を付けないノーレイティングと呼ばれる評価方法を導入し始めています。時代の変化に合わせて優秀な人材を確保し続けるためにも、適切な手法が必要とされているのでしょう。

 海外企業を含めた人材獲得競争を勝ち抜くためには、競争力のある人事評価制度が必要ではないでしょうか。とくに需要の高いIT人材では、自身の正当な評価を求める傾向も強くなっています。納得感のある正しい評価は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、企業価値を高める源泉となるため、競争力のある企業となるでしょう。

 しかし、人事評価制度を刷新することは容易ではありません。まずは、メンバーシップ型(人に仕事を当てはめる)とジョブ型(仕事に人を当てはめる)を併用することを考え、さらには、ジョブを細分化してタスクに人を当てはめる人材の活用方法を考えるべきでしょう。モノだけではなくスキルや能力もシェアが可能な時代となり、一時的に社外の人材の力を借りることも可能となりました。それは、自社のスキルや能力に対する評価が、現代社会の評価から乖離していないかを確認することにもなります。

 働き方が多様化しているように、人材の活用方法や評価方法も多様化していくと良いですね。

落合 真人