DX:進めたいのに進めない理由
Vol.2 リーダーシップと意思決定
先回、『Vol.1 経営層のマインド』でDXを推進するために必要な要素を6つ挙げました。まず、その中で実現が難しい3つの要素について説明します。
- ③ 行動に移す:アジャイルマインド
→ 計画を立てて決められたことをこなしていくことではなく、まだ見ぬ世界で新たに価値を創るために、マーケットの反応をみながら試行錯誤を繰り返していく - ④ 対話の重要性を認識する:ビジョンの提示、一部門ではなく全部門での取り組み
→ ビジョンを示すリーダーが中心となり、システムも含め、関わる全ての人たちが疎結合で緩やかに繋がり、共通のゴールに向かうチームを組成する - ⑤ 社外とも積極的に連携する:“丸投げ”ではなく主体としてコントロール
→ 企業経営と同様の取り組みと捉え、コントローラビティを失わないように外部企業と積極的に連携し、自らが主体的に行動する
上記3要素を実現するためには、IT分野に明るく、自らが先頭に立ってリーダーシップを発揮できる人がいなければなりません。やることが明確ならマネジメントできる人がいれば問題ありませんが、先例のないDX推進では自ら積極的に課題を解消していくリーダーシップが必要となります。
しかし、日本企業にはリーダーシップが生まれにくいカルチャーがあります。INSEADのエリン・メイヤー教授が提唱する多文化分析のツール「カルチャー・マップ」から“リーダーシップ”と“意思決定”の傾向を見てみると、リーダーシップは階層主義で、意思決定が合意形成型という相反しそうなユニークなパターンとなっています。リーダーは、上からは結果を求められ、権限がないので合意形成のために膨大なコミュニケーションコストを払い、成果に対するリターンも少ない、滅私奉公を求められる傾向が強いのではないかと感じます。
このような状況では、リーダーシップを発揮できる人物を自社内で育てることも中途で採用することも非常に困難ではないでしょうか。望むような能力を持っている人物は、経営者やコンサルタントなど、社外でそれ相応の対価を得ているのではないでしょうか。現時点では、リスク、コスト、リターンのバランスが一番良い方法がリーダーシップの外注化です。DXのような組織横断型プロジェクトを成功に導くにはリーダーシップを外部に求めることを検討してはいかがでしょうか。
落合 真人