DX:進めたいのに進めない理由
Vol.1 経営層のマインド
2021年8月31日、経産省より「DXレポート2.1」が公表されました。「2025年の崖」で話題になった「DXレポート〜ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」が公表されたのがコロナ以前の2018年9月。2020年12月、コロナ禍による危機的状況に対し迅速に対応できた企業と、対応できなかった企業の差が拡大しているという状況を踏まえ、DXを加速するための課題と解決策を取りまとめた「DXレポート2(中間とりまとめ)」が公表されました。「DXレポート2.1」では「DXレポート2」で明らかにできなかった、「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿やその中での企業の姿がどういったものであるかという点について取りまとめられました。
その中でデジタル産業を構成する企業を4つに類型化しています。市場の変化に迅速に対応する必要性や、1社で対応できない多様な価値を結びつける必要性から、ユーザ企業(①)にパートナー企業(①②)が伴走し、プラットフォーマ(③)が提供するエコシステム上で、新ビジネスやサービスを提供するバリューチェーンを築く、ネットワーク型への業界構造の変化が求められています。
DXを実現したいと考える企業の多くは、まずDX事例を求めます。しかし、先進的なDX事例は少なく、業種が同じであっても目指すべきものが異なるため、参考となるべき事例はほとんど見つかりません。経営層におけるDXの課題には、「Why:DXの目的がわからない」、「What:どうすればDXになるのかがわからない」、「How:DXの進め方がわからない」がありますが、DX事例から解決の道筋を見つけようとしてもうまくいきません。
DXを推し進めるために必要な要素は次の6つです。DXを理解し、社内、社外(社会、顧客、外部企業)との対話を重視し、迅速に行動に移す“マインド”が大切になります。
- ① 価値創造の源泉の変化に気づく:利益を生む源泉がデジタル空間に遷移
- ② 現状に危機感を持つ:デジタルディスラプターの存在
- ③ 行動に移す:アジャイルマインド
- ④ 対話の重要性を認識する:ビジョンの提示、一部門ではなく全部門での取り組み
- ⑤ 社外とも積極的に連携する:“丸投げ”ではなく主体としてコントロール
- ⑥ 社会、顧客と連携する:フィードバックループを構築し新たな価値を創出
しかし、①②については比較的容易であっても、③④⑤の実現が非常に難しく、これでは「DXレポート2.1」にもあるネットワーク型への業界構造の変化もままなりません。
では、なぜ難しいのか。次回「DX:進めたいのに進めない理由 Vol.2 リーダーシップと意思決定」で触れてみたいと思います。
落合 真人