DX:進めたいのに進めない理由
Vol.3 価値創造の源泉

「IT(Information Technology、情報技術)」とは機械と機械をつなぐものであり、「デジタル(Digital)」とは人と人をつなぐものです。

 ITとデジタルがまったく別のものであることを伝えるために、台湾の「デジタル担当大臣」のオードリー・タン氏が、「IT大臣」と記載することが多い日本に向けて発信した言葉です。オードリー・タン氏の言葉を借りて、混同しがちなITとデジタル、そしてDXの意味についてあらためて整理すると、以下のようになります。

  • IT:機械と機械をつなぐもの
  • デジタル:人と人をつなぐもの
  • DX:機械と機械をつないでこれまでにない人と人のつながりをうみだすもの

 2022年10月に掲載しました『DX:進めたいのに進めない理由 Vol.1 経営層のマインド』で、DXを推し進めるために必要な要素の一つとして、「価値創造の源泉の変化に気づく:利益を生む源泉がデジタル空間に遷移」を挙げました。上記の説明を当てはめて考えると、実際に価値をうみだすのはデジタル空間、つまりIT技術ではなく、それを利用している人と人のつながりということになります。
 これまでIT技術は、人間がやらなくてもよいような単純作業を代替し、作業の自動化、効率化をすすめてきました。生産性を高めるこの流れが続くとITによって限界費用がゼロあるいは限りなくゼロに近づく社会が到来するかもしれません。そのとき、生活に必要なモノやサービスのコストもゼロとなっていくでしょう。実際にコミュニケーションサービスのコストも限りなくゼロに近づいてきました。電話やFAX、郵便葉書などに変わって、LINEやWhatsApp、ZoomやGoogle Meetなど、無料でコミュニケーションできるサービスが普及しています。

 IT産業のうちソフトウェアに関わる業界では、当初からひとつのシステムを作ったあとは、ほぼコストゼロでそのコピーを作ることができました。もともと限界費用がゼロであったため、ライセンスビジネスも早々に崩壊し、あらたな価値を創造するために何十年も試行錯誤を繰り返しています。これからは非IT産業でも既存のモノやサービスの価値がなくなってしまう可能性を考えなければなりません。そのために必要なキーワードがDXであることを理解しなければなりません。

 現状に危機感を持ち、「利益を生む源泉がデジタル空間に遷移」することを正しく理解し、その時必要な行動に移るためにも、社会の変化やテクノロジーの進化に目を配り、継続的な知識のアップデートが必要になります。しかしテクノロジーの進化はとても速く、一般的で身近な存在となったときにはすでに周回遅れの技術となっています。そこで、先端IT人材を身近に置き、常にテクノロジーに触れ、体験できる環境を構築することを考えてみてはいかがでしょうか。

 私たちは、国内では不足している先端IT人材を、信頼できるネットワークを通じて国内企業の皆さまにご案内いたします。

落合 真人