常識を疑え

 2020年11月17日、平井卓也デジタル改革担当相は、中央省庁の職員を対象に『パスワード付きZIPファイル』の送信ルールを廃止する方針を明らかにしました。政府の意見募集サイトである「デジタル改革アイデアボックス」に送られてきた意見を採用したものです。さらに、プライバシーマーク制度を運営する日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)も11月18日、「プライバシーマーク制度では上記の方法(ファイルをパスワード設定により暗号化して添付し、そのパスワードを別メールで送信すること)による個人情報を含むファイルの送信は、メールの誤送信等による個人情報の漏洩を防げないこと等から、従来から推奨しておりません。」と明言しています。
 『パスワード付きZIPファイル』はファイルを共有する方法としては日本企業のビジネス慣習として定着しており、資料を添付する際は『パスワード付きZIPファイル』で送付することがマニュアル化されている企業も多いのではないでしょうか。しかし今後は国の方針に沿った対応をおこなう企業も増えてくるかもしれません。例えばクラウド会計ソフトを提供するfreee社は、2020年12月1日からパスワード付きファイルの受信を廃止しています。

 また、セキュリティに関して従来の常識が覆る瞬間が3年前にもありました。2018年3月、総務省がインターネット利用時のパスワードについて、以下のような注意喚起をはじめました。
 「利用するサービスによっては、パスワードを定期的に変更することを求められることもありますが、実際にパスワードを破られアカウントが乗っ取られたり、サービス側から流出した事実がなければ、パスワードを変更する必要はありません。むしろ定期的な変更をすることで、パスワードの作り方がパターン化し簡単なものになることや、使い回しをするようになることの方が問題となります。」
 さらに、新型コロナウイルスによる影響で、「印鑑認証」、いわゆるハンコ文化が見直されようとしています。
 これからますます、“常識だとされていたものが常識ではなくなる瞬間”に立ち会う機会が増えるのではないでしょうか。これまでの慣習も「何のためにそれをやっているのか」、「どんな意味があるのか」、常識とされていることを疑い、常に何故?何?と問いかけ続け、物事の本質を見ることが大切になります。『パスワード付きZIPファイル』の取り扱いが、これからの日本のニューノーマル時代を考える良いきっかけになるのではないかと思っています。

「先見・独創」

 私たちは、あらゆる分野において科学的な分析と柔軟な発想に基づき、斬新かつ本質をついたアイデアを生み出し実現し続けます。


落合 真人