失敗は起こるものと捉え、世界をつくり変えて未来を創造する名経営者 イーロン・マスク

 新聞、テレビ、ネットのニュースで盛んに取り上げられているSDGs。SDGsとは、「持続可能でより良い社会の実現を目指す国際的な取り組み」のことです。しかし、その実態は、投資家等に見放されないようにする為の取り組みにすぎず、企業価値を上げる為の手段の一つの位置づけである企業が多数です。そんな中、人類にとってより良い社会の実現、持続可能な社会の創出を目的として宇宙ロケットの企業『スペースX社』・電気自動車メーカーの『テスラ・モーターズ社』を立ち上げたイーロン・マスクを今回の題材とします。

 イーロン・マスクは、1971年6月、南アフリカ共和国の首都ブレトリアで、三人兄弟の長男として生まれました。1988年にカナダに渡り、1990年、カナダのクイ-ンズ大学に入学しましたが、1992年、アメリカのペンシルバニア大学に編入し、物理学、経営学を学びます。1995年にスタンフォード大学大学院に入学しましたが、2日で退学してしまいます。その後、弟のキンバル・マスクと共に、オンラインコンテンツ出版ソフトを提供するZip2社を起業し、1999年Zip2をコンパックに売却しています。

 イーロンは、人類にとってより良い社会の実現、持続可能な社会の創出を目的として掲げ、その為に必要な会社を立ち上げています。2002年、火星に人類を移住させる為、宇宙ロケットベンチャー『スペースX社』、2004年、火星移住ロケットが完成するまで、CO2による環境悪化を食い止める為、電気自動車ベンチャー 『テスラ・モーターズ社』、2006年、太陽光発電会社『ソーラーシティ』です。

 スペースXは、2006年、第1回目「ファルコン1」1号機の打ち上げに失敗し、2008年、4度目である、「ファルコン1」の打ち上げを成功させ、民間ロケット初の地球軌道を飛行しています。2010年、宇宙船ドラゴンが民間初で地球を周回後、無事帰還しています。2012年、宇宙船ドラゴンが民間初の国際宇宙ステーションとのドッキングに成功しています。しかし2013年、ファルコン9の1段目ロケットが洋上着水に挑戦するも失敗に終わります。2015年、ファルコン9の1段目ロケットが史上初で陸上着陸に成功し、2017年、ファルコン9で一度使用した機体を再利用した宇宙船ドラゴンの打ち上げの成功は史上初のことでした。

 テスラでは、2008年、高級スポーツカー「ロードスター」、2012年、セダン「モデルS」、2017年、大衆車「モデル3」を発売しています。

 イーロン・マスクについては、スペースXでは、ロケットを打ち上げ、テスラでは、電気自動車を発売して好評を博したことが大体的に取り上げられています。しかし成功するまでに、スペースXでは、最初の「ファルコン1」が、準備が間に合わず打ち上げが延期になり、メインエンジンのコンピュータの問題が起こり、打ち上げが中止となることもありました。やっと発射できたと思ったらその数秒後に断熱材が落下し、その後制御不能となり南太平洋上に墜落と散々な目にあっています。テスラでは、「ロードスター」の開発が遅れ、出荷にもたつき、「セダンS」も、計画した生産台数に届かず、予約客をハラハラさせ、「モデルX」では、動作不良を起こして、リコールを申請する事態を起こしています。財政的にもイーロンの失敗が続いている最中の2007年にはサブプライムローン問題、2008年、リーマンショックがあり、倒産の危機に陥っています。

 イーロンは、この時、“テスラの資金問題は心配する必要はない。たとえすべての投資家が見捨てても、私がテスラを支える”と言い切って市場とテスラの現場に安心感を与えようとしています。また、“私はこれまでもこれからもギプアップしない。息をしている限り、生きている限り、事業を続ける。”と強い意思表明をし、危機を乗り切っています。

 イーロンの経営方針は、「短時間で集中的に考えて、素早く決定し、直ちに行動に移す。もし結果が失敗となっても、そこから短時間で学び、間髪を入れずにフィードバックを行い、さっさと次のステップに進む。」そしてそのサイクルをハイスピードで行うことのようです。

 因みに、イーロンは、会議の議論の最中でも知識を吸収し、頭の中で自分の論理を展開し、いくつかのアイデアに到達させているようです。

 イーロンの“失敗は起こるもの”だと平然と受け入れ、とんでもない失敗を繰り返しながら、平然と前を向いて突き進む姿は、社会変動が激しく、人口減少等で動かなかったらパイが目減り、ジリ貧となる現代では、経営者に必要な要素ではないでしょうか。

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加藤 博司