差別化を以って戦わない経営で成功した名経営者 池野隆光
コロナ禍が一旦、沈静化し、徐々に日常生活が戻りつつある今日この頃ですが、ドラッグストア業界では、10月1日にマツモトキヨシとココカラファインが経営統合し、売上高で業界4位の会社ができました。ココカラファインは、スギ薬局との経営統合も噂されていました。そうした中、他のドラッグストアとの差別化を図る、ドラッグストア業界1位のウエルシアホールディングスの代表取締役会長 池野隆光を今回の題材とします。
池野隆光は、1943(昭和18)年、広島県に生まれ育ちました。1962(昭和37)年、大阪経済大学経営学部に入学し、1966(昭和41)年3月に卒業後、同年4月、 全薬工業に入社しています。
池野は、1971(昭和46)年6月、埼玉県坂戸市に池野ドラッグ(後の株式会社池野)を開業しますが、2002(平成14)年3月に株式会社池野が、株式会社グリーンクロス・コア(現ウエルシア薬局)に吸収合併され、グリーンクロス・コアに入社し、同年11月、同社取締役副社長商品本部長に就任します。その後は、2004(平成16)年11月、同社取締役副社長営業本部長に就任し、2009(平成21)年11月、ウエルシアホールディングス取締役になり、2011(平成23)年9月、ウエルシアホールディングス取締役副社長を経て、2013(平成25)年3月、ウエルシアホールディングス代表取締役会長に就任します。後の2016年にはドラッグストア業界トップの売上高を達成させ、現在もトップの座を維持させています。
池野は、『差別化を以って戦わずして勝つ』を社訓とし、他のドラックストアとの商品の差別化・接客における差別化・店舗機能の差別化・あるいは店舗構造による差別化など、ありとあらゆる部分で差別化できるものを考え、果敢な挑戦を大切してきました。
「差別化」という戦略が最初からあったわけではなかったのですが、厳しい競争の中で選ばれる店舗になるためには、すべてにおいて差別化を推進していくという発想と行動を取り入れざるを得なかったようです。
池野は、“個々の商品の特徴・個性をどのようにお客様に伝えていくのか”という「伝え方の差別化」を重要と考え、あらゆる領域、商品のカウンセリングができることを前提として、それができる専門性が高い社員の育成をしていきました。
池野は、従来の「物」に依存する発想から、地域を支えるための「付加価値の高いサービス(医療・生活・介護)」を提供していく発想へ思考や行動を変容させて、地域が困っている問題を解決させていこうと動いています。
ウエルシアでは、下記のような付加価値の高いサービスを行い、売上高、業績には直接結びつかないが、ウィズコロナに対応した店舗づくりに取り組んでいます。
- 認知症患者やその家族が安心して来店できるように、全店に認知症サポーターを2名以上配置することを目指しています。
- AED(自動体外式除細動器)を全店に設置し、AEDをスムーズに利用するため、社員に講習会を実施しています。
- ウエルカフェを店内スペースに設置して、地域住民の休息の場、井戸端会議の場と同時に店舗や行政からの情報発信の場としての役割を果たすフリースペースして活用させています。
- ライフリーカウンセラー(在宅介護の排泄ケアに悩む来店客の相談を受け、被介護者の体の状態にあった正しい紙オムツを推奨できる能力を有する民間資格)を各店舗に常駐しています。
池野の言う“仕事を通じて社会をよくしたいという考えがなければ、大きな変化に対応できなくなる”は、SDGsが推進されている現代では、肝要なことではないでしょうか。
弊社プレジデントワンでは、『経営者育成カリキュラム』がありますので、ご興味のある方はご相談ください。
加藤 博司