人的資本経営

 6月7日に政府は、経済財政運営と改革の基本方針を閣議決定しました。岸田首相は「人への投資」に重点を置き、3年間で4千億円を投じる。と発表しました。付加価値を生み出せる人材の育成が成長のカギを握るとする肝いりの法案ですが、GDPに占める人材投資割合は先進国最低水準のままです。

 経済産業研究所の試算によりますと、「教育訓練投資の累積額が2倍になると労働生産性が2.2%上昇した。特にサービス業は2.5%高まり、効果が顕著だ。」と指摘します。

 経済産業省は、「人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。」と定義しています。

 また、同省の人的資本に関する研究会では、「企業が事業環境の変化に対応しながら、持続的に企業価値を高めていくためには、事業ポートフォリオの変化を見据えた人材ポートフォリオの構築やイノベーションや付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、経営戦略と適合的な人材戦略が重要となります。同時に、機関投資家などとの関係において、企業価値向上に向けた人的資本の非財務情報の活用も、重要です」と説明が続きます。

 では、人的資本も含め、非財務情報を企業価値に置き換えたアメリカのデータを紹介いたします。

 「知的資産の仲介ビジネスを展開する米国オーシャントモ社によれば、アメリカのS&P500を対象にした企業価値の源泉を見極めるための分析の結果、1975年に有形固定資産が83%に対し無形固定資産が17%と圧倒的な開きがあった。その後、無形固定資産の数値は年々高まり、1995年には無形固定資産が68%に対し有形固定資産が32%、そして2020年には無形固定資産が90%と圧倒するに至っている。」(書籍:経営戦略としての人的資本開示)

 1989年、世界時価総額ランキングTOP50の中に日本企業は32社もありましたが、現在はトヨタ自動車1社だけです。この凋落はバブル崩壊によるものではありますが、その後、積極的に人的投資をしてこなかった日本が、再度、浮上できなかったことは明らかです。一方、アメリカは人的投資を増加させ続けた結果、1989年の14社から34社と飛躍的に成長し続けております。

 我が国は、これまで、人材を人件費というコストとして扱い、利益を捻出するためにコストカットを有効な手段としてきましたが、これからは、人材を将来の利益を創造する資本とし、人材に効果的な投資をすることが急務です。このプロセスにおきまして、弊社代表の著書をご紹介させていただきます。

 また、人的投資と合わせて重要なことが、組織診断です。組織の課題を的確に理解していなければ、人的投資の優先順位を間違ってしまう場合があります。組織診断の取り組みにつきまして、リーフレットと併せてご覧ください。

取締役 牧野 春彦