カンボジアのポテンシャルが高い産業:課題とチャンス

 いまだに世界でコロナ禍が続いている中、ASEAN諸国でも、経済・産業に大きな打撃を受けています。
 もちろんカンボジアも例外でありません。世界銀行によれば、コロナの影響により、2020年のカンボジアのGDPは、2%縮小しました。この30年間で初めてです。
 しかし、2021年は、経済成長の兆しが見られます。例えば、「ソーシャルディスタンス(社会的距離)の緩和、国内旅行および観光といった国内経済活動により、カンボジアは、2021年には4%の経済成長が見込まれている」と世界銀行が発表しています(World Bank, 2020)。

 コロナ後のカンボジアの経済再構築には課題があります。これまで、カンボジアの経済成長を支えていた産業は、伝統的に農業・製造業・建設業・観光業などですが、貯水インフラや灌漑施設整備の不備・電力価格の高さが成長の妨げになっています。また、経済規模が小さく、主に海外投資や対外貿易などの資本流入に大きく依存しているという現状があります。

 カンボジア政府は、2015年〜2025年カンボジア産業開発政策(Cambodia Industrial Development Policy 2015-2025)を発足したのに加え、現在様々な対策をとっています。例えば、他の国との貿易および投資関係を強化し、輸出のための現地生産能力を増強し、自由貿易協定(FTA)に署名しています。また、「投資家フレンドリー」政策の一部として、投資法の改正が進められています。その内容は、研究開発・人材育成・機械のアップグレードなどのメリットベースの活動、生産機械のアップグレードおよびこれらのシステムの輸入に対する免税という優遇措置になるようです。これにより、カンボジアの農業部門をさらに拡大するために最新技術の導入が大幅に増える可能性があると期待されています。
 さらに、第4次産業革命と言われる時代に対応するために、「デジタル化」に向けて新たなテクノロジーの導入が注目されています。具体的には、昨年、新しいオンライン法人登録システムであるCamDX(https://camdx.gov.kh/)が立ち上げられました。これにより、法人設立証明書などの全ての書類がオンラインで処理され、手続きにかかる時間とコストが大幅に削減されました。従来の法人登録は、約1ヶ月もかかりましたが、このシステムにより、法人登録までの期間は、8日間と大幅に短縮されたのです。
 また、デジタル通貨「バコン(https://bakong.nbc.org.kh/)」も導入されました。これは、簡単にいえば、スマホのアプリを使用し、お店での支払いや送金ができるものです。人口約1600万人のうち、モバイル接続数は総人口の100%以上もあるカンボジアでは、このシステムにより、金融機関間の相互運用性の向上・決済システムの効率とセキュリティの強化・金融包摂の促進などが期待されます。

 コロナはいずれ終息すると思いますが、ASEANに進出したいと考えていらっしゃる皆様に、カンボジアの事例としてご参照していただき、進出先の1つとしてご検討いただければ幸いです。いつでもご相談ください。

株式会社ANCジャパン
執行役員 カンボジア・ベトナム担当
リム・リーホン