ロボットは東大に入れるか。
新年あけましておめでとうございます。
そろそろセンター試験ですが、みなさんは、ロボットで東大入試にチャレンジするプロジェクトをご存知でしょうか。
国立情報学研究所が中心となって2011 年よりスタートした人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか。」(略称:東ロボ)。
2016年11月、大学入試センター試験の模擬試験を受験した結果、明治大学や立命館大学などと同レベルの有名私立大学で「A判定」を獲得し、一定の成果を挙げることができましたが、来年度以降のセンター模試受験は見送られ、東大入試への挑戦は事実上断念することが発表されました。
(筆):筆記/(リ):リスニング
協力:株式会社ベネッセコーポレーション
国立情報学研究所の新井紀子教授は「東大を(人間と同じように)目指そうとすると、全ての分野を強化しなくてはいけない。AIにとって難しい『意味を理解する』という分野を突き詰めようとすると、膨大な時間とコストがかかる」と話しました。
現時点で、(一般的に言われている)AIにとって、文章の意味を理解することは、不可能に近く、「東ロボ」も、国語と英語の偏差値が低く、苦手な分野であることがはっきりしています。(国語:49.7、英語(リ):36.2)
そもそもAIにとって、「言葉」とは単なる記号でしかありません。その「言葉」が現実では何を表しているのか、その意味を理解できていません。ではなぜAIは、意味もわからない問いに回答できるのでしょうか。
AIはある文章を見た時、キーワードとそのキーワードの出現パターンから、確率的に回答を求めています。
「10人が3個ずつりんごをもらった。りんごは全部でいくつ必要でしょうか?」という問題があった場合、「10、3、ずつ」をキーワードとして認識し、その出現パターンから「10×3」という計算式を確率的に導き、「30」を回答します。
ところが、「一日10台の自動車を生産する工場が3日間操業した。さて、自動車は何台できたでしょう?」という問題では、「10、3」しか認識できず、何を回答すればよいかわからなくなるのです。
文章の意味が理解できていない、とはこういうことです。
ここで、一つの疑問が浮かび上がります。
「文章の意味が理解できていないAIよりも、得点の低い高校生がいるのは、どういうことだろう?」
実は、この疑問に対する調査もおこなわれました。その結果、約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、約2割は、基礎的な読解もできていないことが明らかになりました。
複雑な文章でなければ、テクニックとして、キーワードを拾い、パターンを覚える解き方が効率的かもしれません。しかし、AIと同じ解き方では、AIには太刀打ちできません。
将来的に、これまで人間がやってきた仕事がAIによって置き換えられる可能性があります。手順を覚えていればできる仕事は、AIに取って代わられるでしょう。今後ますます、最低限の知識を前提とした「知識重視社会」となります。その最低限の知識を得るには、自分の知らないことが説明されている文章の意味を理解できなければなりません。
文章の意味を理解するために必要な「思考のプロセス」は非常に複雑で未だ解明できていません。機械で実現できるには、まだまだ時間が必要でしょう。
人間は、常にAIの一歩先を進めるように、学び続けることが重要です。
2017年も、わたしたちは、学び続けるためのサポートをおこなっていきます。
落合 真人