コーオウンド・ビジネス
内閣府は、労働力人口が減少していく日本経済が成長を続けるためには、生産性の向上が必要であり、その施策として、第4次産業革命への対応を求めております。第4次産業革命とは、IoT、ビッグデータ、AIを活用した産業革命であり、日本はそれぞれの分野でトップを走っております。経済産業省は、この第4次産業革命で生産性の向上を補うばかりでなく、様々な分野で新たなビジネスが創発され、より高いレベルでの成長性を期待しております。私も、第4次産業革命の流れについては必然性を強く感じ、それぞれの企業経営者が積極的に採用することで、新たな事業モデルを創出し、付加価値の向上に繋げていかなければならないと考えております。
一方で、第4次産業革命のテクノロジーとは別の切り口で、生産性の向上を上げているモデルが米英で紹介されております。それが、コーオウンド・ビジネスです。
コーオウンド・ビジネスとは、社員が会社の大株主となることで、「自分たちの会社」という意識が高まり、社員ひとりひとりがオーナーシップを発揮するようになります。その結果、自分たちの会社を誇りに思い、親切になります。新人や新たに異動になった人たちに対しては、まわりがどんどん声を掛け、自主的にその部門の仕事のノウハウを伝え、その人が快適に仕事を習得できるように支援します。
英米の研究によると、売上高、利益率、社員定着率、会社の持続性、不況対応において、一般の会社に比べ、コーオウンド会社の方が優れているという研究結果が発表されております。
アメリカのESOP(従業員株式所有プラン)に対し、日本版ESOPもありますが、どちらかというと、社員持株会の形式が多く、社員の財産形成と安定株主化という目的が中心であり、本来の株主による経営参画の色合いはありません。
コーオウンドモデルは、グローバルに成長戦略を描く企業には馴染みにくいかもしれません。しかし、地域のために、地域と一体となって活動している企業においては、コーオウンド型の会社経営も考えられるのではないでしょうか。米国ではすでに、民間雇用の約1割をコーオウンド会社が支えており、英国では2020年までにGDPの10%を、コーオウンド・ ビジネスで稼ぎだすようにするという宣言がなされているようです。
世の中に「よいコト」をビジネスにしていこうという企業活動が増え始めています。利益追求型の資本主義モデルとは違う価値観を求めて、社員全員がハッピーになれるモデルとなるのかもしれません。
取締役 牧野 春彦