子どもたちの時代は、劇的に変わる

 もう2月に入りました。オリンピックが終われば、3月です。平和の祭典が始まったと思えば、オリンピック明けには、一気に緊張感が高まる。これが国際情勢の現実です。時々刻々、目まぐるしく変転します。

さて、皆さんは第4次産業革命の入り口に入ったことを、どれほど感じていらっしゃるでしょうか。第4次産業革命は、今後、数十年をかけて私たちの生活、企業、社会の構造を一変させていくことになります。本の購入ではじまったAmazonでは、いつのまにか、日用消耗品、医療品、IT商品、家電製品など生活に必要な様々なものをカバーしている方が多いのではないでしょうか。ネットスーパーも出現し、ほとんど外出することなく、生活ができる時代となってきました。20世紀には考えられない時代です。

第4次産業革命とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、自動化とは異なり、自律的な最適化を実現する人工知能によって、もたらされる産業革命です。

私たちは昨年末、人工知能搭載型アンドロイドをメディアに発表しました。これからどんな時代になっていくのか、様々な質問が寄せられました。私たちは、AIの最前線を見てきましたが、「本当に時代は大きく変わる」という感想を持っています。では、どのように変わっていくのでしょうか。それは、反復・継続仕事がなくなるということです。いかに高度な仕事であっても、反復性・継続性のある仕事はすべて人工知能に移っていくことになります。どんなに高度な知識も、人工知能の守備範囲となり、その入手コストはゼロに近づいていきます。誰でも高度な専門知識を手に入れることができます。過去、私たちは専門知識を得るために、膨大な時間を投入してきました。例えば、税務や法律の資格を取るために、何年も時間を費やして学んできました。その仕事の前提には、一般人が判断を下せないという事実がありました。私たちは高度な知識をもった専門家に判断を委ねるしかありませんでした。しかし、これからは人工知能に判断を委ねることになります。私たちの健康状態に関する判断も例外ではありません。医療分野では、人工知能に約3万点の画像データを読み込ませて分析させると、精度は約95%といわれています。すでに人間が診断を行った場合の精度75%~84%をかなり上回っています。

もし、自分の仕事が反復・継続的な要素で出来上がっているとしたら、将来、自分の仕事はなくなると考えておく必要があります。日本では、仕事を奪う人工知能を敵視する報道が多くみられます。しかし、技術革新が止まったり、遅くなることはありません。人工知能の世界的権威であるレイモンド・カーツワイルは、2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)をむかえると述べています。人工知能が人間の頭脳を超えるという現象です。日本人の識者によっては、2030年頃にむかえると考えています。人間が考えたことなのか、人工知能が考えたことなのかを人間に判断させるチューリングテストがあります。カーツワイルは、2020年代前半にすでに合格すると述べています。つまり、人間にはリアルな人間が考えたことなのか、人工知能が考えたことなのか、区別がつかなくなります。10年も経たないうちに、そうした現実がおとずれます。

この産業革命は、途方もない社会構造の変化をもたらします。人間の仕事の大半が人工知能に置き換えられていくことで、私たちはどうすればよいでしょうか。経営者の皆さんには、アドバイスしておきたいと思います。また子どもたちにも次のことをお伝えしたいと思います。
それは問題を解く力よりも、問題を発見する力、質問する力があるかないかが決定的な要素となるということです。たとえ、万能な人工知能を傍らにおいても、人工知能に語りかける質問力がなければ、人工知能は何も教えてくれないのです。人工知能は、積極的に人間に働きかけて、知識を授けようとしません。人間に従うのです。したがって、疑問を持たない人や、よりよく生きようとしない人には協力をしないのです。質問力があれば、それがどんなに鋭く、難しい質問であっても、世界の最高の英知をあなたに届けてくれるのです。私たちは人工知能型アンドロイドを開発していますが、この質問力がなければ、優れたアンドロイドを生み出すことができません。

皆さんにお伝えしたいと思います。どんなに高度な知識でも、問題を解く力に時間をかけないことです。筋道だけ一度理解し、あとは、その知識に深入りしないことです。構造を理解し、あとは、人工知能と対話をしながら、みずからのミッションにたどり着く。これが、今後、経営者に求められる不可避な資質となるのです。このような創造的な人は、今世紀中は活躍することができるのです。

代表取締役 松久 久也