「AI」と「感情」

近年、採用活動にもAIが利用されています。これまで人間が手掛けてきた書類選考や一次面接をAIが代行し、業務負荷を大幅に減らしつつ採用の精度を高める。さらに、職場の雰囲気を改善し、最適な人材配置を考える役割もAIが担い始めています。

ところが最近、AIによる採用判定を検討しながらも、導入を見送った企業の話を耳にしました。実際にAIによる書類選考をおこない、採用担当者の判定と比較した結果も、それほど悪くなかったそうです。ではなぜAIの導入を見送ったのでしょうか。
問題となったのは、AIの判定基準を人間が説明できないからでした。
「なぜこの人を選ぶのか?」
その理由をAIは答えてくれません。
人間があらためて納得できる理由付けをおこない、AIの判断が正しいかどうかをダブルチェックし、採用の判定をおこなう。結局、はじめから人間が判定したほうが速かった、という笑えない話です。

AIは膨大なデータから、「○」か「×」かの判断基準を合理的に学習していきます。人間の言葉による理由付けや感情などを無視して、与えられたデータから即座に答えを返します。その判断は、人間の想像力の限界をはるかに超えており、また正しい確率も非常に高いのです。将棋や囲碁のAIが指す手が、人間には理解できない悪手だと思われながらも、結果的に最善手であったことからも分かるように、すでに専門的な領域では、人間はAIに勝てなくなってきているのです。

人間は非合理的な生き物です。合理的な判断であっても感情がそれを許さないことがあります。血の通わないAIを全面的に信頼できない感情も理解できます。しかし、第四次産業革命のコア技術となるAIは、これからの時代、あらゆるシーンで必須の技術となっていきます。AIは人間に取って代わるモノではなく、人間をサポートしてくれるモノです。これからは、AIの導き出した答えを的確に分析し、上手にAIを活用する能力が必要となってゆくでしょう。

わたしたちは、技術と人間をより深く理解しながら、最適な企業活動のサポートをしています。


 

 落合 真人