中部経済新聞に掲載されました
着眼大局 着手小局 経営に求められる人間力 第9回
「エウレカ!(そうかわかったぞ!)」
古代ギリシャの科学者アルキメデスは、こう叫んだそうです。彼はあるとき、風呂に入ると水位が上昇することに気づきました。上昇した分の体積は体が水中に入った部分の体積と同じであることがわかり、”Eureka! Eureka!”と二度叫んだといいます。人間の体のように複雑な形をした物体の体積を正確に計測するという困難な問題を解決できたと理解し、浴槽から飛び出して裸のまま街をかけぬけ、この発見を共有したと伝えられています。
誰もが経験したことのある、ひらめきの瞬間。それには何が必要なのでしょうか。広告業界に携わる人にとっては必読の書といわれる、『アイデアのつくり方』を1940年に記したジェームス・ウェブ・ヤングは、「データの収集」「データの咀嚼」「データの組み合わせ」「エウレカ!の瞬間」「そしてアイデアのチェック」の5段階を通してアイデアがつくられていくと述べています。つまり、「エウレカ!」と叫ぶための一步目は、情報を集めることです。今回はこの部分に注目していきます。
ご覧の諸氏におかれましては、日々、自己啓発に関するものやビジネス書、業務に必要な本等々、たくさんの文献を読まれている方が多いと思います。しかし、多くの人たちが重要な部分にマーカーなどで線を引くことにとどまっているのではないでしょうか。それに加えて、私がお勧めしたいのが、本に線を引いた部分や、また、人から聞いた有益なエピソードなどをパソコンやノートに記録し、後から見返し、振り返ることができるようにすることです。私自身は、Evernoteというソフトを使い、日々感じたことや読んだ本で印象に残った部分を記録しています。ノートの利点はその時のイメージがつきやすこと。一方で、パソコンを使う利点は、断片的に思い出した際に検索がし易いことではないでしょうか。
いずれにしても、「ことばの限界は自分の限界」とも言われるように、ことばを積み重ねていくことによって、日々の考え方も深まり、それが行動にもつながり、自分自身の人生も前に進めていってくれるものと考えています。
「無からは何も生まれない」。冒頭のアルキメデスはこのようなことばを遺しています。私たちは新しい価値を生み出す何かが訪れることを信じて、忙しさの中にあっても青空を見上げ、季節の移り変わりに意識を向け、読書でイメージを膨らまし、人々との対話を大切にしながら衆知を集めていきたいものです。
加藤 滋樹