現在のAIは人工知能ではない

そもそもAI(人工知能)とはいかなるものなのか。AI(人工知能)を理解することが非常に困難な理由は何処にあるのでしょうか。

「もし人間の脳が非常に単純で、われわれが脳を理解できるとすれば、われわれは非常に単純であり、脳を理解することはできない」 IBMトーマスワトソン研究所のエマーソン・プー氏の言葉です。

わたしたちは、いまだに脳のほんの一部についてしか理解できていません。人間の脳(知能や知性)を完全に理解できていないのです。そのような状態で、人工的な知能を定義することができないのは当然のことで、定義できていないものを理解できないことも当然なのです。

ICTアドバイザリ企業であるガートナー社のアレクサンダー・リンデン氏は、「いまのAIは人工知能(Artificial Intelligence)というよりも、Amazing Innovation(驚くべきイノベーション)の略と捉えるべきと考える。広範囲にわたる問題に対応できる汎用的なAIは20年以上も空想のままで、現在実現されているのは特定領域の問題解決のために設計された『狭いAI』に過ぎない。」と強調しています。

「狭いAI」、つまり、顔を認識して人物を特定したり、文章を多言語に翻訳したり、身近なところではおすすめの商品を選んでみたりするような、特定のタスクを処理するAIは、人間を超える優れた能力を持っています。特定の専門的な領域においては、最近までは人間によってしか解決できなかった問題も、機械学習やディープラーニング、ビッグデータやデータサイエンス、データマイニングなどの技術を使って「データから知識を引き出す」ことで人間と同等もしくはそれ以上に適切に解決してくれます。

現時点では、AIは過大に評価され続けた空想上の概念でしかありません。人間の能力を超えて何でもできる期待感や不安感がありますが、そのような未来はしばらくやって来ません。PCが普及し始めた頃の、何でもできそうだけど何もできない雰囲気に近いのかも知れません。しかし間違いなく「狭いAI」はPCと同様にビジネスに必須の道具となってきています。そろそろ、汎用的なAIを夢想することなく、身近なテーマからAIを活用していくこと検討をするべきではないでしょうか。

わたしたちは、ビジネスの問題をAIやデータサイエンスのチカラを利用して解決するお手伝いをしています。

 落合 真人