RPA導入からみえる人材像
私たちが普段パソコン上で行っている定型的な操作をソフトウェアが代行してくれるRPA(Robotic Process Automation)が話題となっています。一部の銀行では以前より導入されていたようですが、1年程前から一気に脚光を浴びることになりました。現在では多くの企業がこぞってRPAの導入を検討しています。いわばRPAブームともいえる状況ですが、「業務をすぐに自動化できる」「業務が楽になる」「大幅なコスト削減につながる」かどうかというと、短絡的に課題が解決されるともいえそうにありません。
今回は、過日弊社で開催した「生産性向上セミナー」におけるRPAセッションの話題を交えつつ、RPAを活用する人材のあり方について皆さんとともに考えていきたいと思います。
はじめに、RPAはあくまでも手段であり、目的ではありません。「とにかくRPAを導入すれば業務が自動化できる、コストが削減できる」という安易な目的で導入するのではなく、企業全体や、少なくともチーム全体の戦略や課題と結びつけ、どのようなゴールを設定して導入を進めるべきか、事前にしっかりと研究をしておくことが重要です。
次に、はじめから広い範囲の業務に導入するのではなく、一部の業務に絞って試験的に導入することも肝要です。その効果を検証したのちに、徐々に応用範囲を広げて行く、いわば「小さくはじめて大きく育てる」ことが望まれています。
三点目として、大切なのはRPAではなく、ゴールです。そこに至るためのオートメーション化や省人化という方向性を描いたのちに、適切な手法がRPAであれば導入すべきでしょうし、場合によってはRPA以外の手段がふさわしいこともあるといえます。
手始めにRPAを適用する業務を選ぶ際には、自動化しやすい単純作業や繰り返しの作業を選ぶ必要があります。しかし一方で、RPAに向く作業を洗い出してロボット化するだけでは、全体の効率化という波及効果は出ません。結局のところ、私たちにはRPAの導入を契機として、煩雑な業務を統合したり、思い切って無駄な業務を廃止したりするなど、大胆な業務改善をする必要性が求められていくこととなります。
最後に、以上の課題を解決していくには、組織の壁を乗り越え、RPAの活用について全社にわたって提言や管理、そしてコーディネートを行う、部門横断型の人材が必要不可欠になってきます。実際に作業をする方や課題を抱えている方と、サプライヤーとの間をつなぐ存在です。結局は「相手の立場にたって物事を考えることができるかどうか」。そんな人材がRPA導入の分野でも求められているのではないでしょうか。
加藤 滋樹