中部経済新聞に掲載されました
経営者のためのコミュニケーション心理学 第20回

経営者のためのコミュニケーション心理学
第20回
顧客の心理的属性
価値観や購買動機の把握を

 イメージがつきやすいようで、実は漠然としがちな顧客理解。皆さまはどうしていますか?
 米国の著名な営業コンサルタントであるブライアントレーシーは、顧客理解の方法について、年齢、学歴、職業、家族構成などで分類するデモグラフィック(人口統計属性)、価値観や動機などのサイコグラフィック(心理的属性)をあげています。
 日本ではターゲットとなる顧客の予測に、性別、年齢、居住地、職業などのデモグラフィック情報が主に使われてきました。たとえば「38歳、都心に住む独身男性」といっても、好きなファッションや音楽、遊ぶ場所も人それぞれです。したがって、ターゲットとなる顧客の行動予測としては、さほど有効ではありません。他に策もないので、「とりあえず企画書にでも書いておくか」という具合で活用してきたのが現実です。
 しかし、近年の消費行動はますます理解し難い、予測し難い存在になってきています。先日のハロウィンの盛り上がりのように、情報化の進展によって、口コミやSNSによる激しい一過性のブームが起きやすくなっている一方で、歴女や乗り鉄などオタク的文化によるマーケットも誕生しやすくなってきています。このため、ブライアントレーシーは、デモグラフィックよりもサイコグラフィックの活用を重視しています。具体的には、ターゲットとなる顧客の価値観、購買動機を把握し、行動の予想をすることです。
 それでは、このような情報は、どのように収集すればよいのでしょうか。
 代表的なものは既存顧客へのインタビューです。「現時点で最高の顧客は誰ですか?」と、自分自身に聞いて真っ先に思い浮かぶ人をあげてみてください。そして、次にその人と話をするときには、個人的な話題を聞き出します。たとえば、先週末に何をしたか、どのような本を読んでいるか、などです。私の場合は単刀直入に「なぜその仕事をしているのですか?」と問いかけます。
 デモグラフィックは調べやすい代わりに表層的な理解に終始します。サイコグラフィックは難易度が高くなるものの顧客への接近は本質的です。このように、競争過多が進む現代において、私たちがすべきことは薄い部分での顧客理解ではなく、本当の意味での顧客の考え方の理解です。遠回りかもしれませんが実は一番近道ともいえます。
 相手の心に深く接近する。結局のところ、これこそが顧客の私たちに対する信頼性を高めてくれる契機となるのではないでしょうか。

加藤 滋樹

 

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