AIとBI

 今月のテーマはAIとBIです。英語の頭文字をとった略称は意味のわからないものが多いと思いますが、AIは、皆さんがよくご存知のように、Artificial Intelligence(人工知能)です。では、BIはなんの略称でしょうか。AIと関係がありそうなBIといえば、「AIが生み出す経済価値を、BIとして再配分しよう」という考え方もあるように、Basic Income(最低限所得保障)の略称でもありますが、今回は、Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)について触れたいと思います。
 BI(ビジネスインテリジェンス)とは、「企業などの組織のデータを、収集・蓄積・分析・報告することで、経営上などの意思決定に役立てる手法や技術のこと。」~出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』~であり、事実に基づき意思決定を支援するための手法となります。膨大なデータの中から、人間が意思決定するために役立つパターンや特徴を見つけやすいように「見える化」すること、そしてそこから推論や仮説、判断をおこなうことがBIの目的となります。
 ここで気がつく方もいらっしゃると思いますが、AIもまた、データからパターンや特徴の発見、推論や仮説をおこないます。違いは、BIでは人間がおこなうことを、AIでは機械がおこなう点です。2000年代なかばに、企業に蓄積されたデータを有効活用し、意思決定に役立てようとして、BIが少しだけブームになりました。2010年代になると、ビッグデータやディープラーニングといった概念や技術が登場し、BIに対する機運が高まってきました。近年、データ分析の分野にも多くのAI技術が取り入れられるようになり、AIには、企業経営の意思決定を補佐する役割を担うことが期待されています。好むと好まざるとにかかわらず、これからの時代の企業は、AIを活用したBI―事実に基づいた意思決定―が重要になってきています。
 機械がデータを分析し、推論し、仮説を立てることまでやってしまうと、人間は何をするのでしょうか。人間の役割は、AIが出した複数の選択肢の中から、より納得できる答えを選択するだけです。AIは人間の良きアドバイザーとなるのです。しかし現時点では、AIが出した答えの信頼性を担保することが難しく、判断する人間には、データ分析のスキルが必要になっています。データと会話できる能力や、それらをわかりやすく伝えるための「データストーリーテリング」が重要な能力になります。将来的には、自然言語処理技術の発達によって、AIと会話することで答えを導き出すことができるかもしれません。その時必要になるのが、「問いかける力」です。
 現在と将来、どのような能力が必要なのかを見極め、経営者自身や従業員の教育をおこなうことが重要です。わたしたちは、最新の技術動向を把握し、企業経営に役立つ情報やサービスの提供をおこなっています。


落合 真人