国家一大事に、政治は大丈夫?

 昨日、ある外国の人とコロナ事情を話していたところ、「わが国ではコロナの感染者が増えているにもかかわらず、何ごともなかったかのように人々が振る舞いはじめて驚いている」といいます。「どうしてそのようなことになるのか驚きます」との感想がありました。その人は日本に住んでいますので、自国と日本ではコロナに対する向き合い方がまったく異なるので戸惑っているようでした。
 中世でパンデミックが起こったとき、人々は夥しい死者を前に、次第にその状況を受け入れ、無感覚になっていったといいます。ちょうど戦地へ行って毎日、戦友が亡くなっていく中で死ぬことに対して感覚を失っていく状況に似ています。
 私たちもすでに2020年の半ばを過ぎて、終わりの見えない闘いの中で、自分自身を見失いそうになっている人々が多くなってきました。そうした中、アメリカのアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のファウチ所長が下院の公聴会で次のような証言をしました。「ワクチンについて、ことしの終わりか来年のはじめに完成するというのは夢ではなく、現実的な見通しだ。開発は順調に進んでいる」(2020年8月1日NHKニュース)という見方を改めて示しました。医療関係者の人と話をしていますと、ワクチン開発は何年先になるかわからないという見解も多く、真偽のほどはわかりませんが、ファウチ博士のこの証言には、一縷の光が見えてきます。ワクチン開発の最前線に立っている関係者は、人類を救済するという使命感に燃えていることと思います。ぜひ開発を成功に導いていただきたいと思います。
 さて、「終わりのない闘い」で、企業の資金は枯渇しつつあります。しかも、「経済活動をせずに企業を維持してください」という要請は、「Go To トラベルと自粛を両立してください」という要請と同様に矛盾に満ちた政策です。今回のパンデミックによる企業の窮状は、企業の責任ではありません。企業救済を国家事業として取り組まなければなりません。営業自粛、休業補償、営業再開、感染再拡大、営業自粛、休業補償では、いたちごっこになってしまいます。金融機関も経営に窮する企業に貸し出しを行っていますが、これも大きな問題を含んでいます。ただでさえ収益が低下している日本企業に、赤字資金を融資したとしても返済できる見通しはありません。パンデミックが終息した後に途方もない不良債権問題となるはずです。今回の事態では、すべての企業が存続できない可能性があります。国家の一大事です。こうした観点で日本企業を救済するためには返済期限のない資金供給が不可欠です。そうした事情に合う資金とは劣後債です。劣後債とは元本返済のない資本性ローンです。国を挙げてすべての企業に劣後ローンを供給することです。もし将来、当該企業が立ち行かなくなったときは国が資本を買い取る。国家の一大事とはそのようなことではないでしょうか。今回の第二次補正追加で、3500億円の予算措置がなされたようですが、日本企業を救済することはできません。一つのアイデアとして取り扱っているにすぎません。
 今起こっていることは100年に一度のことです。日常的な視点では国家の政策となりません。今の政治を見て、誰もが大丈夫?と感じています。一日も早いワクチンの開発を祈るばかりです。


代表取締役 松久 久也