「運のいい人は、失敗についてくよくよ悩まず、
悪い出来事の良い面を見て、そこから学ぶ」
(エリック・バーカー)

 新型コロナに明け暮れた1年が終わろうとしています。これほどまでに高度に発達した文明が、わずか0.1μmという微粒子にあっけなくやられてしまうという光景を見るに、私たちの物質文明の本質的な弱さを思い知らされた年でした。
 コロナと同時進行で、地球環境も危機的状況に陥っています。そんな状況の中で米中は覇権争いにしのぎを削っています。まったく人類の欲望には際限がありません。ノーベル化学賞受賞者、福井謙一さんは言っています。「欲望をまともに満たすような科学文明が二十世紀に出現した。それによって、自然破壊も起こったし、資源エネルギーの莫大な消費も起こった。ものを単に知るだけの学問としてのサイエンスならよかったのですが、人間の欲望がサイエンスの結果を利用しようとして、自然破壊、その他の諸々の作用をもたらしたわけです。」(出典「哲学の創造」PHP研究所)
 福井さんが指摘するようにサイエンスによる文明の肥大化の結果、未知の領域に次々と踏み込み、新型コロナを誘い出してしまったのかもしれません。奇跡の星といわれる青い地球に満足できず、宇宙に新天地を求めて科学の発展はとどまるところを知りませんが、もし、新型コロナのような災厄をもたらす物質に出会わないとも限りません。そのとき私たち人類は、どうするのでしょうか。地球環境を追い込んだように科学文明の高度化には常にリスクがつきまとうようです。私たちの欲望をどこで打ち止めにするのかという、非常に高いハードルを前に、選択を迫られているのかもしれません。
 さて、今年は世界のすべての人々にとって多難な年となりました。しかし、私たちは事実としてこの貴重な1年という時間を過ごしました。この貴重な時間をどのように理解し、次の年につないでいくのかは大事なことです。冒頭で言いあらわされた「運のいい人は、失敗についてくよくよ悩まず、悪い出来事の良い面を見て、そこから学ぶ」(エリック・バーカー)という視点で今年を振り返ってはどうでしょうか。コロナ禍がなければ決して考えることのなかったことがいくつかあるのではないでしょうか。気づいたことを実行に移せるよい機会になるかもしれません。なぜならば、自分一人が気づいたとしても、世界の人々が、「そう思わなければ」学んだことを実行に移せないからです。
 小さな存在である筆者が気づいたことを列挙しておきたいと思います。

  1. 働くことと幸福を追求すること、これらを両立させることを学んだ
  2. いつでもどこでも仕事ができることがわかった
  3. 国境、人種の壁を取りはらいコミュニケーションがとれることがわかった
  4. オンライン社会では自分を磨かなければコミュニケーションがとれないことがわかった
  5. 地球環境を犠牲にしない経済活動を考えるようになった
  6. 人間は自然の一部であることがわかった
  7. マスク、手洗い、換気で他の病気を劇的に減らせることがわかった
  8. 助け合うことの重要性を再認識できた
 様々な気づきを得られた方が多くいらっしゃると思います。その気づきによって、ぜひ来年のビジネスチャンスにつなげていただきたいと存じます。来年の皆さんの進化を期待したいと存じます。よいお年をお迎えくださいませ。

代表取締役 松久 久也