エンゲージメントに直結する能力
先回、日本の従業員のエンゲージメントの低さ、エンゲージメントが業績に大きく寄与する事実ついて触れましたが、今回は、エンゲージメントを高めるために必要な能力についてお知らせしたいと思います。エンゲージメントは会社が何かをお膳立てするだけで上がるわけではありません。働いている社員一人ひとりの能力も必要なのです。
各国企業を対象としたタワーズワトソンの調査から、エンゲージメントと相関の高い項目 ― エンゲージメントに寄与している要因 ― を見てみます。
日本企業では、「経営トップのリーダーシップ」がなく、海外企業にはない「福利厚生の充実」が5位にランクインしています。この順位をみるだけでも、日本企業の特徴を表していると言えますが、今回は、「直属の上司との関係性」に注目してみます。
「人と人との関係性」に必要な要素は何でしょうか。それが今回のテーマでもある「能力」、すなわち、「EQ(感情をコントロールする能力)」です。
良好な上司と部下との関係性を築くためには、まずリーダーとなる上司にEQが欠かせません。例えば、EQをリーダーシップ研修に取り入れた、物流サービスを提供しているFedExでは、次のような結果が出ています。
・リーダーとしての能力が8-11%向上
・参加者のうち72%の意思決定能力が向上
・参加者のうち60%のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)が向上
・参加者のうち58%の影響力が大幅な改善
出典:Case Study: Emotional Intelligence for People-First Leadership at FedEx Express
https://www.6seconds.org/2014/01/14/case-study-emotional-intelligence-people-first-leadership-fedex-express/
― 良好な関係性を築いている上司からの指示であれば、「よし、がんばろう」と思えるが、そうでない上司では、「そんなことやりたくない」と反発してしまう。 ―
みなさんにも心あたりがあるのではないでしょうか。
上司のEQが低く、良好な関係性を築くことができていないと、部下の、仕事や組織に対して抱く心情的な愛着心や貢献意欲が低下してしまいます。
感情をうまくコントロールできると、本来自分自身が持っている能力を最大限に発揮する事ができるようになります。それだけではなく、よりよい人間関係を構築し、周りから多くのサポートを得られることで、大きな成果に繋がります。そして、よい成果がよい人間関係を築く、好循環サイクルが生み出されます。このような好循環サイクルが、従業員のエンゲージメントを高めていくのです。
もちろん、タワーズワトソンの調査結果やFedExの例が、すべての企業にそのまま当てはまるとは限りません。それぞれの企業ごとに、傾向や対策は異なります。だからこそ、一般論ではなく、自社のためだけの効果的な対策を講じる必要があります。そのためにも、まずは現状を正確に測る必要があるのです。
わたしたちは、エビデンスに基づいた組織診断やEQトレーニングにより、従業員のエンゲージメントを高めるためのサポートをおこなっています。
落合 真人