未来人材ビジョン
令和4年5月に経済産業省から「未来人材ビジョン」が発表されました。これは、経済産業省の未来人材会議で議論された、「これから求められる人材像」やその採用・育成に向けた課題についてまとめられたものです。日本の産業界が直面するデジタル・脱炭素という大きなうねりを見据えた労働需要の変化は、「問題発見力」、「的確な予測」、「革新的なことを構想する力」が強く求められる。と指摘しています。
このような3つの重要なテーマをいかに企業が社員教育で学ばせることができるか。一方、個人が自己学習においてそれらの能力を高めることができるかという具体的な取り組みも本レポートは触れられております。
一度、このレポートをご覧いただくことをお勧めいたします。
現在、日本の労働人口は7,400万人なのに対し、2050年には5,300万人まで低下するという推計が発表されています。現状の日本を維持し続けるための手段は、減少した2,100万人分の労働生産性を向上させることで補うか、外国人の流入により補うかの2択しかありません。これはマクロ的に日本という国全体の話ですが、ミクロ的に考えれば、自社の労働力不足に繋がります。30年もしないうちに30%の労働力を生産性の改善でクリアするのか、外国人の採用で補うのかということです。
先日、商工中金のシンクタンク、一般社団法人商工総合研究所のプロジェクトで、商工総合研究所 の研究員、中京大学の教授、桜美林大学の教授を岐阜県瑞浪市にあります中工精機株式会社様にお連れいたしました。目的は、技術系外国人が日本の企業でどのように働き、成長しているか。また、企業側が外国人を受け入れる際に大切にされたポイントなどをヒヤリングすることです。
中工精機様へインドネシアの高度人材をご紹介させていただきましたのは、2020年6月でした。当時の課題は、機械設計の人材不足でした。同社は粉砕機などのメーカーで、地場産業の美濃焼の原料を製造する粉砕機を生産していました。時代の変化とともに、セラミックスや環境関連へと市場ニーズの変化への対応とともに成長してきました。同社の技術力は業界でも評判が高く、営業をしなくても仕事が入ってくる環境にありますが、前述しました通り、設計がボトルネックとなっており、仕事はあるものの受け入れることができないという状況でした。弊社がご紹介しました人材は2年経過しましたが、一人前の設計者になるよう毎日一生懸命努力されておりました。工場見学では、彼が設計した機械が組付けられており、とても感動しました。
彼の成長を支えているのは勿論、同社の社員の皆さんです。とても社員を大切にされておられる家族的な社風です。同社の取り組みで感動した事例を2つ挙げさせていただきます。1つ目は、彼の通勤ルートの確保です。彼が住む駅前のアパートから会社までは少し距離があり、自転車で通勤します。同社の役員は、彼が入社される一か月も前から、アパートから会社までのルートを毎日自転車で通い、どのルートが一番安全なルートかを探し続けられました。2つ目は、NHKのテレビ番組「サラメシ」を同社でも週に1度行っております。これは社員のコミュニケーションと健康への気づかいで、数年前から実施されていました。そこに、彼専用にイスラムのハラル対応したサラメシも用意されるようになりました。とても素晴らしい取り組みであり、彼はずっと同社で成長し続けてくれるという確信があります。
当日、インタビューされました中京大学の教授も以下のようにコメントされました。
“同社では,将来成長に向けて具体的なビジョンを掲げておられ、それが彼の採用と育成につながっていることが、大変印象に残りました。工場も拝見することができ、部品加工から組み付けまで一貫体制をとっている同社の技術力の源泉を垣間見、同社の技術には様々な応用の可能性や、海外展開の可能性があるとお見受けいたしました。同社のように技術力と成長意欲があり、日本企業の良さである家族的な雰囲気を大切にしていらっしゃる企業様が、世界で市場拡大することを願ってやみません。”
このような心持で外国人を採用・育成されれば、労働生産力不足の解決に繋がることと思います。
外国人材のご紹介等も弊社グループで対応可能でございます。是非ご検討ください。
取締役 牧野 春彦