経営者インタビュー

データサイエンスによる人材育成プログラム導入
 -トップが改革に本気かどうか、社員は観察している-

今回は、内藤電機株式会社の内藤社長にインタビューしました。

 同社では1期6ヶ月間のプログラムを基本とし、現在は4期目がスタートしています。社員の皆さんの思考方法や仕事に関するモチベーションなどのアンケートを統計解析し、会社の抱える課題を客観的に明らかにした上で、解決に向けてチームでの対話を行っていることが特徴です。今回は代表取締役社長の内藤繁廣さんに、経営における人材育成の重要性について伺いました。

 内藤電機は、本社である岐阜の他に、東京、横浜、静岡、名古屋、一宮、大阪、金沢に拠点があります。社員の役割も営業、工事、設計、管理部門と求められる専門性もまったく違います。月に一度、管理職が集まる会議では、会社としての事務連絡は各部門のリーダーから社員へ伝わることはあるかもしれませんが、残念ながら「会社の方針や考え方」が伝わることはありませんでした。部門間のコミュニケーションが断絶しており、会社のベクトルをあわせていくことは、困難な状況でした。また、経営をしていると普段からいろいろな問題が起きます。どの会社もまさに「いたちごっこ」の状況ではないでしょうか。私たちもこのような課題を感じているさなか、2014年7月に「科学的な分析をすることによって、根本的な解決を図っていく」、このような説明を受けチャレンジをスタートしました。

 当社では会社の課題を統計的に分析してもらったのちに、テーマを決め、地域や部署、役職を横断したチームで対話を行いながら解決を考えてもらっています。はじめはメンバーを選んだ担当者も半信半疑だったと思います。しかし、1回目を進めていくなかで私は決断しました。「全員やるぞ、そしてミーティングには私が必ず出るぞ」と。結果、これがよかったと思います。トップの本気度合い、トップがコミットしているかどうか、トップが改革に本気かどうかを社員は良くも悪くもしっかりと観察しています。はじめた頃の3年前に比べても普段からお互いの意見が言えるようになり、社内の風通しが円滑になりました。

 あらゆる会社のリーダーは不安を持っています。それなりに社員向けの研修やセミナーにも参加していると思います。しかし、一方通行になっていないでしょうか。双方向、つまり自発的に意見を言える雰囲気にならないと根本的な問題は解決できません。私たちの取り組みでは会社が抱える課題すべてが一気に解決できないかも知れません。しかしそれでも、「一年にひとつでもいいから、根本的な問題を解決させよう」と意気込んでいます。経営者は逃げてはいけません。実はそれが一番、よい経営への近道になるのではないでしょうか。


加藤 滋樹