中部経済新聞に掲載されました
着眼大局 着手小局 経営に求められる人間力 第6回

【着眼大局 着手小局】経営に求められる人間力
第6回
心に響くことばとは
熱意と相手への配慮がカギ

 「久しぶりにおばあちゃんに会ったとき、とても喜んでくれました。普段離れてしまっている家族とのコミュニケーションを取りやすくする、そんなサービスを開発したいのです」
 先日、ある大学の学生たちの起業に関するプレゼンテーションをお聴きする機会がありました。唯一といっていいほど強烈に印象に残ったのは、冒頭の彼の発表でした。企画の内容には発展の余地があるものの、相手の目をしっかりと見て立案の想いを真っ直ぐに語る姿には、心を打たれるものがありました。私も人前で話をする機会をいただくことがありますが、彼のような信念と熱量を持って、相手に想いを届けることができているのだろうか、私自身が大切なことを学んだ1日でした。  心に響くことば、伝わることばとはなんでしょうか。たったひとことで、人生が変わってしまうくらい影響をもたらすこともあれば、日々聞き流してしまう、記憶から流れてしまうようなことばもあります。お読みいただいている方々、とりわけ経営者の方々におかれましても、会社の将来や指し示す道を、朝礼や社内報、会議など、さまざまな場所や手段を用いて社員の皆さんやお取引先の皆さまに訴えておられると思います。それでは、相手に響くことばを伝えるにはどのようなことが必要なのでしょうか。答えは、エンジニアにおける技術的な知識、販売員における商品知識といった能力的な知識だけではないと確信しています。
 アメリカのカーネギー教育振興財団の成功要因に関する調査では、技術的知識は15%にすぎず、85%は別の部分、個性や対人関係などの技術である「人を動かす能力」にあることが分かっています。その人を動かす能力の大切な要素が、自分が心の底から伝えたいことを、熱意をもって伝えることではないでしょうか。
 「気の利いたことを言おうとすると失敗する。 しかし、心から信じることを話すことは失敗することがない」。人生哲学を研究し続けた作家であり企業家教育者のデール・カーネギーはこのように言っています。私自身としても、心の底から信じられる事の条件として「個人の利益と組織の利益、そして社会の利益が一直線上にあること」を大切にしています。それは相手の気持ちに充分に配慮し、相手の成長と発展を心から願うことばではないでしょうか。
 私たちはご縁をいただいた人たちの成長と発展を考え、日々、心に響くことばを伝えていきたいものであります。

加藤 滋樹

 

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