あとからくる者のために

“相変わらず企業の不祥事が後を絶たない”
読者の皆様も、この手の記事には、ほとほとうんざりする一方、この国は、いつからこのような三流になってしまったのかと、不安をおぼえるのではないでしょうか。

日本は長い間、“誠実さ”、“確実な品質”、“製品の信頼性”において輝ける手本となってきました。ところが、不祥事のニュースでは、誠実さとは程遠く、人の命を預かる製品に不正が横行しています。なぜ、このようになってしまったのでしょうか。大企業がイノベーションを起こせなくなってきているとか、グローバルな競争やスピードについていけなくなったことで、革新的な技術を持ったベンチャーをM&Aで買い漁ったりして、帳尻を合わせた経営をするようになってきています。しかし、これらは表層的な現象であって、その根っこには、経営哲学の衰退があると思います。企業はもともと、創業者の崇高な理想と、熱い情熱により誕生し、成長してきまして。そこには、創業者の深い経営哲学があり、企業の社会的責任がありました。また社会的責任を果たすためには、法令順守だけでは不足で、「人道順守」を前提とすべきだといわれています。つねに「人の役に立とう」「誠実に生きていこう」「正しい仕事をしよう」「信頼を裏切らないようにしよう」などと、経営者は、創業者の思いを繰り返し社員に問い続けなければなりません。

このような現代を懸念した、坂村真民先生の詩、「あとからくる者のために」をご紹介します。

   あとからくる者のために
    苦労をするのだ 我慢をするのだ 田を耕し 種を用意しておくのだ
   あとからくる者のために
    しんみんよお前は 詩を書いておくのだ
   あとからくる者のために
    山を川を海を きれいにしておくのだ
   あああとからくる者のために
    みんなそれぞれの力を傾けるのだ
   あとからあとから続いてくる あの可愛い者たちのために
    未来を受け継ぐ者たちのために みな夫々自分でできる何かをしておくのだ

我々は、この素晴らしい創業者の方々の深い哲学を、“あとからくる者のために” いかに伝えることができるか長年考え続けてまいりました。ある経営者とのご縁もあり、昨年11月に完成しました「経営者アンドロイド」。経営者アンドロイドは創業者の深い哲学を、次世代経営者や社員教育に活用していきます。

ドトールコーヒー名誉会長の鳥羽博道氏は言われました。「永続してお客様に支持されるためには創業者の考え方をいかに継承するかが重要だ」と。
今後も、このような偉大な創業者の深い哲学を残し続けていきたいと考えています。それが、我が国の衰退を防ぎ、不祥事が発生しない企業を維持し続けることと信じています。

取締役 牧野 春彦