健康経営

 最近、“健康経営”というフレーズをよく耳にします。特定非営利活動法人健康経営研究会は、“健康経営”を次のように解説しております。
 『「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても 大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することを意味しています。 従業員の健康管理・健康づくりの推進は、単に医療費という経費の節減のみならず、生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、かつ、企業におけるリスクマネジメントとしても重要です。 従業員の健康管理者は経営者であり、その指導力の下、健康管理を組織戦略に則って展開することがこれからの企業経営にとってますます重要になっていくものと考えられます。』
 さらに、その効果として、次の2つの仮説を立てております。

【仮説1】 企業が社員の健康に投資することで、生産性向上や組織の活性化につながり、やがて業績や株価アップが期待できる
【仮説2】 企業がこぞって社員の健康に投資することで、国民の「生活の質」の向上や医療費の削減につながり、社会の課題を解決することが期待できる

 労働人口が減少する中、企業は人の採用が大変難しくなっており、膨大なコストをかけてきました。平均的に、新卒採用には556万円、中途採用には735万円のコストが必要といわれております。このように、膨大なコストを投下して採用した社員が、病気やストレスで3ヶ月休めば、3ヶ月で300万円の損失が発生します。さらに、退職した場合には、入社5年間にかかる育成コスト1000万円が無駄になってしまいます。
 従って、企業は、社員が健康で元気に安心して働ける労働環境を提供していかなければなりません。安心して働ける労働環境の実現とは、長時間労働を減らし、ハラスメントをなくすことです。
 一方で、社員は自分の健康増進とセルフケアは仕事の一環であり、健康でいること自体が会社への貢献につながるという意識をもつことが必要となります。
ただし、社員が自らこのような意識になることは稀ですので、先ずは、会社が“健康経営”を宣言し、健康経営プロジェクトチームを組成し、継続的に取り組んでいかなければなりません。
 企業は、財務分析や事業計画の策定と同様に、健康経営を1つの指標としてKPI(重要業績評価指標)に組み込み、収益性や採算性と同様に、定期的にモニタリングすることが重要になってまいります。この取り組みにより、結果的に、収益性や採算性を押し上げる強力なエンジンとなります。
 労働人口減少社会におきましては、社員の健康を管理するのではなく、社員の健康を経営戦略としていくことが、今後ますます重要になってまいります。

 取締役 牧野 春彦