社員を幸せにする経営

 2019年4月の有効求人倍率は全国平均で1.63倍、中部地区では1.89倍です。実は、この数字にはトリックがあります。この数字は上場会社も含んだ数字であり、従業員が300人未満の企業(いわゆる中小企業)では、大卒求人倍率が9.91倍で過去最高とのことです。つまり、中小企業においては10人内定を出して1人来るかどうかということです。バブル絶頂の世の中を凌ぐ勢いです。経営者や人事担当責任者はきっと頭を抱えていることでしょう。特に、経営者の場合、人材が確保できない=事業縮小を余儀なくされるからです。

 そのような状況を克服するためには、これまでとは違う価値観・構造が必要になってきます。それは、経営目標の第1優先に、“社員幸福度を高める”ということを宣言することです。これまでは、業績が一番でした。業績が良ければ社員も幸せである(はず)と考えられてきましたが、逆の発想です。社員の幸福度が高まれば、個人の業績もアップしますし、企業業績もアップするのです。

 海外のデータに基づきますと、社員の幸福度が高くなることによって、生産性が3割増加すると言われています。また、離職率も大幅に減少します。前述しました通り、新規採用が非常に難しくなっているため、既存社員の幸福度を上げることがとても重要です。経営者が「社員を幸せにするぞ」と決意すればいいのです。そうすれば、幸福経営は始まります。

 ある会社は、社員を幸せにする取り組みとして、「おやつタイム」を設けました。これは、スウェーデンの「フィーカ(Fika)」という習慣からヒントを得ています。スウェーデンでは、フィーカは、「お茶すること」を意味します。 スウェーデンの多くの企業では、毎日10時と15時にフィーカの時間が設けられていて、15分くらいのコーヒー休憩があります。どんなに忙しくても、社員全員が一斉に作業を中断して、雑談とか仕事の話をします。その結果、フィーカの習慣が仕事の生産性を高めていると言われています。その効果は、コミュニケーションを活性化するだけじゃなく、15分の休憩でリフレッシュもできる。あとはオン/オフのメリハリも生まれるそうです。スウェーデン人は休むときは休むけど、やるときはものすごく集中して短時間で終わらせるそうです。

 「ちょっと無駄」に思えるこのような活動を社員全員ですることです。これは、社内の中で対話(ダイアローグ)を習慣化させる仕組みづくりになります。我々は、通常、大きな問題が発生すると会議をして解決策を協議します。しかし、常に、対話をする組織は、実は、小さな問題を共有し、自発的に解決に向けて動き出します。“対話を習慣化する”という仕組みを導入できるのは経営者だけです。“社員を幸せにする”という宣言の1つ目のアクションは、実はこのようなことから始めることができます。

 弊社が考える “社員を幸せにする経営” について、リーフレットをご参考にして下さい。


取締役 牧野 春彦