with コロナ

 前回は、「Afterコロナ」と題して、コロナ後の社会に向けた準備についての内容を記しました。その後、緊急事態宣言は、さらに一ヶ月の延長が決まりました。終息がいつになるのか…。 一方で、専門家によりますと、第2波はさらに強力な感染力を持ち、数年に及ぶ長期戦となる可能性を示唆しております。
 そのような、長期戦をいかに戦い抜いていくかという視点で、今回はwithコロナというテーマで考えていきたいと思います。
 緊急事態宣言はとても窮屈で退屈なものです。一方で、家族と過ごす時間が格段に増加しました。親子で退屈な時間を有意義に過ごすために、一緒にケーキをつくったり、工作をしたりと、これまで以上に思いやり、工夫をして過ごしているようです。その中で、一番の効果は、家族で食事をする機会が圧倒的に増えたということではないでしょうか。従来であれば、会社へ通勤している父親の帰宅は遅く、食事を一緒にするのは、せいぜい休日の日だけだったと思います。それが、ほぼ毎日食事することが可能になりました。ここで、家族が一緒に食事をすることの大切さについて、京都大学の山極総長は次のように話されております。
 『現代社会は家族で食卓を囲む機会が減り、それぞれバラバラに食事をする「個食」が増えている。「個食は人間をサル化している現象。それは人間性を形づくる家族のコミュニケーションの場を疎かにしてきた現代社会の負の側面でもある」と危惧し、家族との食事は、人間が本来持っている共感力や感性を取り戻し、心豊かな社会をつくるための方策である』
 我々は、コロナにより生活様式が一変しましたが、一方で、大切なことに気づくことができました。 経済活動が停滞することで、自然環境の悪化も鈍化し、それぞれの仕事の在り方を見直すチャンスを与えられています。その結果、「私たちの働き方は、今後どのように変わるのか?」 「コロナ終息後は元には戻れない」という大きな危機感と、「時代は変わる」という小さな高揚感を感じているのではないでしょうか。全員が「なんとかしないといけない、今のままでは生き残れない」と考えているこの時期は、イノベーションと組織改革の絶好のチャンスと捉えることができます。
 上述しました通り、テレワークにより、通勤する必要性が減り、働く場所の重要性が薄れています。
 世論調査会社のギャラップ社の調査によりますと、「従業員が週の労働時間の6~8割、つまり週に3~4日を会社以外の場所で働くと、エンゲージメントの向上幅が最大になる」とのことです。会社に行かない方が、会社へのエンゲージメントが上がるという皮肉な結果です。しかし、これは非生産性の時間が減少することにより起こる現象なのです。
 withコロナでは、テレワーク中は、テレワークにより創造された貴重な時間を活用し、自立したプロジェクトチームを組成し、イノベーションにチャレンジすることができます。また、就業後は家族との時間を大切にし、テレビを消して会話する時間を増やすことで、素敵な関係を構築することができます。
 まだまだ長期化しそうな緊急事態宣言ですが、この期間を、与えられた好機とし、これまで私たちが忘れてきたものを取り返し、目の前の雑務に追われて生み出せなかったものを、あらたに生み出す貴重な時間として、日々を真剣に過ごしていかなければならないと考えております。


取締役 牧野 春彦