雨垂れ石を穿つ

 学生たちは新年度を迎え、3月が決算期となる多くの企業では新たな期がはじまりました。桜の美しい季節ではありますが、基本的には外出を控えている生活様式に於きまして、季節の移り変わりや、風の匂いを感じる機会が減少しています。コロナ時代に於きましても、例年通り新卒採用を行った企業は新人研修が始まっていることと思います。そこで今回は、人材教育についてお話ししたいと思います。

 2021年2月に産業競争力強化法改正案が閣議決定されました。法改正の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、戦後最大の落ち込みを記録するなど、危機に直面しています。そのため、グリーン社会への転換や、デジタル化といった国際的な競争条件の変化への推進をするために、企業が前に踏み出しやすくするための施策を本法により実現しようとしております。その上で重要となるのが、人材です。
 既に、2019年3月に、経済産業省は、「人材競争力強化のための9つの提言(案)」を発表しています。

 上記の9つの提言の内、人材教育にかかわる項目が5・6・7の項目です。

 

 そして、人材教育について、『日本で一番大切にしたい会社』シリーズで有名な坂本光司先生は次のように解説しています。
 “成長発展している企業は、社員教育に熱心である。では、社員教育の熱心な企業はどの程度の時間とお金をかけるべきなのか、人材育成の3つのパラメーターが存在する”

第一、売り上げに占める教育訓練費が1%以上
第二、社員1人当たりの年間教育訓練費が10万円以上
第三、年間所定労働時間に占める教育訓練時間が5%以上

 この3つのいずれかに該当していれば、その企業は教育企業であるとのことです。皆様の会社ではいかがでしょうか。なかなかこの水準を超えていくことは難しいと思います。
 社会人基礎力をはじめ、本来は家庭で教えなければならないことを会社で教えなければならないのが実態です。20年近くの家庭教育を会社で行うわけですからとても多くの時間がかかります。

 坂本先生は、『雨垂れ石を穿つ』が大事だとお話しされております。(わずかな力でも、長年にわたって根気よく続ければ、物事を成し遂げることができるということ)

 新年度を迎える多くの企業に於きまして、今一度、人材教育を見直す絶好のチャンスではないかと存じます。


取締役 牧野 春彦