地域を支えるローカルビジネス

 先月の私の寄稿では、驚くほどにコロナ感染者数が急激に減少した不可思議な現象について触れておりました。しかし、オミクロン株により、世界中で緊張感が一挙に増してきました。結局、今年もコロナに振り回された一年であり、来年もそのような状況が続くものと思われます。Afterコロナは程遠く、Withコロナの状態がずっと続いていくように思えてなりません。そして、Withコロナの状況を前提とした生活と経済活動をあらためて考え直さなければならないと思います。それは、コロナにより世界的に最も効率的であったサプライチェーンが崩壊し始めているからです。顧問先の経営者のお話によりますと、コロナからの脱却により受注が上向いてきたとの朗報を受けた矢先に、今度は、部品が調達できず製品を作ることができないという悲鳴です。世界的な半導体不足だけでなく、端子1つの部品が調達できないため、製品が組み上がらないのです。そのため、出荷ができず、受注残が増加する一方だということです。部品が調達できない期間は半年以上になるものもあるようです。政府や金融機関はコロナ資金に続いて、このような状況に対し、支援策を講じなければ資金が持たなくなってしまいます。さらに、原材料の高騰と、次から次に経営者を苦しめる状況が続いています。このような状況を招いた背景には、自分勝手なサプライチェーンの最適を求め、行き過ぎたコスト削減の追求と利己的精神の代償であると考えます。本来、我々はもう少し心に余裕があり、「お互いさま」という精神や「丁度いい・ほどよい」という心持があったのではないでしょうか。これも、行き過ぎた資本主義の結果、“自分さえ良ければいい”という構造に変化したからではないでしょうか。「お互いさま」とか「丁度いい・ほどよい」というのは、相手と自分の関係や、地域と自社との役割を理解した状態で成立します。

 12月3日の日本経済新聞に面白い記事を見つけました。“宇都宮の株式会社サクシードというコンサルティング会社は、「地産地消」型M&Aプラットフォーム『ツグナラ』の全国展開を目指す。”という記事です。この、『ツグナラ』の特徴は、地域の優良企業を集めたサイトを公開し、事業譲渡したい経営者が事業承継先としてツグナラ企業を「逆指名」できる点です。あくまでもM&Aを地域内で完結することでサプライチェーンの断絶をさせないという発想はとても重要であり、前述したような課題解決の1つの手段になるのではないかと期待したいと思います。「地産地消」型M&Aにより、「お互いさま」精神や「丁度いい・ほどよい」という価値観を地域内において持続していくことが大事だと考えます。

 サクシードの水沼社長は次のようにコメントされています。“「街の小さな商店も経営資源として残すべきだ」と断言する。地域に多様な企業が残れば就職や取引先を地域内で選べ、地域の豊かさにつながる。逆に「都市部の大手企業に買収されれば地銀の融資先も減り、さらに地盤沈下が進む」。中小企業同士を地域でしっかりつなぐビジネスの力で地方創生を目指している。”

 地域の医療機関、不動産、小売(スーパーやコンビニ)、飲食店など、決まった地域商圏内に大半の顧客が存在するビジネスであるローカルビジネスの活性化が、地方で湧き上がっていくことが、日本を明るくするきっかけになるのではないでしょうか。

 サプライチェーンの効率化を図るもう1つの手法が、IT化です。地域内の中堅・中小企業もIT化の積極的な導入により、大企業に負けないシステムを連携して作るべきだと考えます。一方、DXの流れにより、優秀なIT人材を国内で見つけることが難しくなっています。その対策の1つとして、外国人高度人材の活用は有効的であると考えます。その情報収集の一環としまして、今回、三十三銀行様とJETRO三重様主催によります、高度外国人材のWEBセミナーに、弊社の関連会社であります株式会社ANCジャパンも登壇します。
 ご興味のある方は、是非申し込みをお願いいたします。
 

取締役 牧野 春彦