一年の締めくくりにこそ考えたいこと
師走をむかえ、公私ともに本年の反省や来年の計画をたてている方も多いのではないでしょうか。また、この季節に関わらずとも、規模の大小はあっても、物事を進めていくにあたって、計画を立て、実行していくということは、日々、起きていることであると思います。普段何気なく意識している、この「計画」。この時期だからこそ、その重要性を立ち止まって考えてみたいと思います。では、実際に計画にのぞむにあたって、私たちは何を大切にしていけばよいのでしょうか。浅学ながら私が意識しておりますのは、大局、戦略、そして志の三つであります。
中国の戦国時代末の思想家であり儒学者であった、荀子は、「着眼大局着手小局」ということばを遺してくれています。物事を大きく広い見地で見つつも、実行にあたっては目の前の小さな一歩からはじめていこう、という意味です。多くの経営者が座右の銘としておられるように、私自身も、このことばを大切に手帳に記しております。
次に戦略。企業によっては、計画という言葉より、経営戦略、事業戦略のように、「戦略」ということばを使われる場合も多くあります。この戦略ということば、その字の如く「戦い」を「略す」と書きます。私自身、恥ずかしながら、思い立ったら即行動、走りながら考えるという性分であり、遠回りをした経験、そもそもスタートラインを間違える経験をしてしまったことは、一度や二度ではありません。今となってはそのような失敗も、貴重な経験や糧となってはおりますが、やはり、物事を始めるにあたっては、一旦、立ち止まって自分自身を客観的に俯瞰し、戦略を考えることが大切であり、このことが、戦いを略すことにつながるのではないでしょうか。
最後に志。国民教育の師父と呼ばれた森信三氏は、「人生二度なし」といい、私たちの生を「充実せしめるように生きなければならない」と述べています(『若き友への人生論』より)。私たちは物事を計画していくにあたって、そのおおもととなる土台を見失ってはいないでしょうか。自分がどう生きるべきかという志を忘れてしまってはいないでしょうか。計画の方向性やベクトルのみを議論して、そのもっと根底にある課題や大切にしたいことを考えることから逃げていないでしょうか。課題を掘り下げ、考えを見つめなおしていくことは決して楽なことではありません。ときに自分の過去の触れたくない心の琴線に立ち向かうこともあるかも知れません。しかし、物事の根本となる部分を見直すことができるかどうかが、計画にあたっての芯の強さにつながっていくのではないでしょうか。
弊社にお世話になり、3ヶ月が過ぎようとしています。私が成していくべきことは、今までお世話になってきた諸先輩方の想い、まさに志を昇華して「次代につなげていく」こと。引き続き、皆様方と経営の本質、志について考えて参りたいと存じます。来年も引き続きご指導の程よろしくお願い致します。
加藤 滋樹