シナジーをつくり出す

 本年も始まり早や2ヶ月が経とうとしております。
 皆さま方の企業におかれましても、新規事業や新展開について、理想と現実のギャップに思いを馳せておられる時期ではないでしょうか。そこで、今回は、二つのものが合わさることによる相乗効果、いわゆるシナジーについて考えてみたいと思います。
 アメリカの著名な経営学者、スティーブン・リチャーズ・コヴィー博士は、人間は一人ひとり、知的、感情的、心理的にも違い、 誰もが「自分のあるがまま(の相手)を見ている」ということに意識を向け、お互いの違いを尊重することがシナジーの本質であると述べています。しかし、残念ながら日常を見渡してみると、世の中の対立のほとんどは二者択一の論争に終始しています。自分と相手の対立と考えてしまい、結果として二つの選択肢しか思いつくことができません。それは、「戦うか」「妥協するか」です。
 実は、ほとんどの場合には第三の案があります。第三の案とは、自分の方法でも相手の方法でもない、お互いが考えたこともなかった、もっとよい方法を協力してつくりあげるというものです。第三の案に至る道はまさにシナジーです。第三の案をお互いが協力して探すことで、結果として、対立を乗り越えることができます。「本当の意味で効果的な人生を生きられる人は、 自分のものの見方には限界があることを認められる謙虚さを持ち、 心と知性の交流によって得られる豊かな資源を大切にする」とコヴィー博士は記しています(以上、『7つの習慣』より引用)。
 「一粒の麦、もし地に落ちて死なずば、ただ一粒の麦にてありなん。死なば多くの実を結ぶべし」という言葉が聖書の中にあります。自分の役割をまっとうすることで数多くの実を結んでいく、という意味でよく使われている言葉です。人様が幸せになってくれたら嬉しい、そんな大きな和に喜びを感じ、この言葉に共感することができるのが、私たち日本人なのです。修養団伊勢道場長をつとめた、故・中山靖雄氏は、「喜べば、喜びごとが、喜んで、喜び集めて、喜びにくる」と述べています(『すべては今のためにあったこと』より引用)。喜び、感謝をして生きること。これこそがシナジーの秘訣につながるのではないでしょうか。
 今までのご縁、これからのご縁に感謝をし、大切にしつつ、日々心新たに歩んでいきたいものであります。


 加藤 滋樹