タフな意思決定が求められる時代

 データサイエンス、AI、IoT、ビッグ・データ。これらはいずれも第四次産業革を構成する重要なキーワードといわれています。第四次産業革命の時代における課題や方向性について、昨年4月、経済産業省は「新産業総合ビジョン」の中で明確化し、我が国の企業統治における課題として「最高経営責任者の下、非連続かつスピードの速い変化に対応していくことが必要であり、グローバル企業との競争であることを念頭に置いた成長目標設定、実現のための戦略・手段、タフな意思決定等、企業経営のあり方について見直す必要」があると訴えています。

 私たちが現場を歩く中で、この課題はとても大きな気づきを与えてくれます。私たちはデータサイエンスを用いて、企業が抱える課題、社員の皆さんが潜在的に感じている課題、そして進むべき方向性を明確化します。私たちは客観的かつ根拠にもとづいた何らかの課題を見つけ出し、解決へ至る道筋を導き出すことができます。しかし、それはあくまでも経営の羅針盤を決める一助にしかなり得ません。一方、日々、経営者やそこで働く社員の皆さまは、多かれ少なかれ、会社の今後や抱えている問題について感じておられます。日々の業務が忙しいなかで、新たな課題にチャレンジすることは、言わばパンドラの箱を開けるようなもの。解決できなかった場合、「無力さを露呈してしまった」「やっぱり取り組まなくてもよかった」というように、会社内外の評価を下げる可能性があります。私たちの把握している事実と現場の意見を融合し、企業が取り組むべき課題を特定化していくという作業は、このようなリスクをはらんでいます。まさに、解決に向けて絶対的な自信と覚悟を持たずして、根拠を持ち心の琴線に触れる衆知経営はできないといえます。

 著名な経営学者、ピーター・ドラッカーは、その著『経営者の条件』の中で、「成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある」と記しています。多忙なビジネスパーソンはスキマ時間を活用して成果をあげようとするが、それだけでは目的を達成できない。最優先すべきものに集中できるまとまった時間を確保する必要性があると警鈴を鳴らしています。また、故スティーブ・ジョブズから思想を受け継いだアップル社の最高経営責任者であるティム・クックは、どれもが素晴らしいいアディアだからこそ却下し、「レーザー・フォーカス」という造語を好んで使い、「しっかり焦点を絞り続けなさい。それも、レーザー光線のように焦点を絞るのです」と述べています。

 冒頭に述べたデータサイエンス、AI、IoT、ビッグ・データ。これらの第四次産業革命を構成するキーワードはいずれも企業経営を構成するプラットフォームといえます。私たちが最新の技術や考え方に迫れば迫るほど、活用する私たちには大きな人間力が問われています。そんなタフな意思決定が求められる時代、覚悟をもった決断が求められる時代が、今まさに到来しています。




 加藤 滋樹