「ジャカルタ・ビジネス・マッチング」レポート
~水道哲学とバナナ哲学~
前回、ご案内しましたとおり、10月15日から5日間の旅程でインドネシアの首都であるジャカルタを訪問しました。
インドネシア政府が主催したビジネス・マッチングへの参加を中心とし、貿易省、工業省、投資調整庁、ジャカルタ特別州政府を訪問しました。10月17日開催されたビジネス・マッチングでは、日本側31名の参加に対して、現地では450人以上の方々が来訪してくださいました。私たちが事務局をつとめておりますASEAN-NAGOYA CLUBメンバーであり、インドネシア経済産業省ビジネス交流センターの事務局長、事務局次長をつとめるインドラさんとマルディスさんが陰日向となってご尽力をいただきました。いくつかの企業では、具体的な進出や取引が進んでいます。尼日双方において、意思決定ができる立場にある人たちが、ひとりの人間として胸襟を開き、信頼関係を築きながら交流をしていくことが、スピード感のある展開へとつながっています。
また、10月18日には、パナソニックインドネシアを訪問しました。現地の起業家であるモハメット・ゴーベル氏と松下電器産業(現・パナソニック)創業者の松下幸之助翁は、1960年に技術援助契約を締結しました。その後、1970年に合弁会社を設立し、電化製品の生産をスタートしました。
幼少時に貧困にあえいだ松下氏は1932年5月の創業祈念式典にて「水道の水のように低価格で良質なものを大量に供給す ることで、消費者に容易に行き渡るようにしよう」という経営思想、「水道哲学」を発表しています。一方、その薫陶をうけたゴーベル氏は「バナナは、根、茎、葉、花穂に至るまで役に立たないところはない。人間のみならず、その他の生き物や、周辺の自然にも有益である。この有益なバナナを誰が食べても咎められない。自然界に豊富にあるからである。我々の仕事は、このバナナのようにインドネシアの人々にとって身近な商品を豊富に供給することである」と、経営思想をバナナに例えた「バナナ哲学」を提唱していました。
日本から6,000キロ近く離れたこの地においても経営の方向性が、一般の人たちまで分かりやすいように掲げられていました。松下電器産業の4代目社長をつとめた谷井昭雄氏は、「具体例を挙げてかみくだいて説明することで、部下や社員に理念が伝わっていきます。さらに、それを組織や仕事に落とし込んでいくことで、自然と理念が実践されるようになります」と述べています。私たちは学びが深くなると、得てして難しい言葉を使って話しがちです。自らが深めた考え方を広く皆さんに伝えていくことは、平易に話す力を問われる、難しい作業です。しかし、そうであったとしても、深めた知識や考えを具体的な形に、ことばに、そして目にみえるようにして伝えていくことに、私たちは改めて挑戦していきたいと思うものであります。
※経済産業省「成長戦略における外国人材の活用について」のご案内
ご参考資料としまして、経済産業省「成長戦略における外国人材の活用について」というリーフレットがございます。制度の詳細をお知りになりたい方、ASEAN地域の優秀な人材との接点をお探しの方のお問い合わせをお心よりお待ちしております。
加藤 滋樹